2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K08737
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高原 和彦 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (90301233)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 微生物糖鎖 / 敗血症 / 免疫抑制 / 免疫賦活 / C. albicans / レクチン / IL-10 / IFN-gamma |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症の治療は、初期の過剰な免疫応答の抑制に主眼が置かれてきた。しかし臨床では、後期に誘導される免疫抑制による再・日和見感染が死亡原因の6-7割を占める。先の研究では、マウス敗血症モデルにおいて病原性C. albicansのN-glycan糖鎖が免疫抑制性のIL-10の産生を昂進し、初期の過剰な免疫応答を抑制し死亡率を改善する事を示した。今回、同糖鎖が後期の免疫抑制状態を解除する可能性を見いだし、その確認と機構解明を目的として以下の実験を行った。 始めに、当該糖鎖による免疫抑制の解除を細胞性免疫が働くとされる遅延型過敏反応(DTH)を用いて検討した。マウスの一方の後肢足蹄にヒツジ赤血球(SRBC)を投与し、同時にLPSを静脈投与し、10日後にSRBCを別の後肢足蹄に投与し足蹄の腫れを測定した。その結果、DTHの低下/免疫抑制が確認された。次に、LPS+C. albicans糖鎖を静脈投与したところ、腫れの程度がLPSの無い状態まで回復した。よって、当該糖鎖の免疫抑制解除が個体レベルで確認された。 次に、抗原特異的な免疫抑制の解除を検討する為に、マウスにLPS+卵白アルブミン(OVA)またはLPS+糖鎖+OVAを静脈投与し、2週間後に脾臓細胞をin vitroにてOVAで再刺激した。その結果、感作時の糖鎖投与により培養上清中のIFN-gamma産生量が糖鎖非存在下に比べ5~8倍程度昂進した。一方で、免疫抑制性のIL-10の産生には変化がなかった。同様の効果は、免疫後1および4週間後にも認められた。 以上の結果より、C. albicansのN-glycan糖鎖が敗血症モデルにおいて後期の免疫抑制を解除するだけでなく、抗原特異的免疫応答を促進する事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の様に、C. albicans糖鎖に敗血症後期の免疫抑制状態を解除する作用がある事を、マウス個体で確認した。 一方で、動物飼育室移転の為、予定した上記作用におけるレクチンSIGNR1の働きを同欠失マウスを用いて検討する事ができなかった。また、様々な側鎖構造を持つ酵母糖鎖を用いて当該作用を担う糖鎖構造の絞り込みを進める計画であったが、SIGNR1の関与を明確にした後に行うことが望ましい為、次年度に延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はC. albicans糖鎖による敗血症モデルにおける後期免疫抑制状態解除の機構について検討する。 腹腔内および脾臓辺縁帯マクロファージ(Mf)の主要な糖鎖取り込みレセプターであるレクチンSIGNR1はC. albicans糖鎖を認識する。また、腹腔内Mfがin vitroで当該糖鎖存在下でIL-10を産生する事から、後期免疫抑制状態の解除に関与する可能性がある。そこで、SIGNR1欠失マウスを用いて、in vivoにおける初期IL-10およびin vitroにおける抗原特異的IFN-gamma産生昂進を検討する。SIGNR1の関与が認められない場合は、Dectin-2およびMincle等欠損マウス等でも検討する。さらに、C. albicans N-glycanは側鎖構造として比較的長い直鎖a-マンナン、分岐型a-マンナン、非還元末端にa-マンノースが付加した直鎖a-マンナンおよびフォスフォマンナンを有している。一方で、S. cerevisiaeは比較的短い側鎖を有している。一方で、例えばSIGNR1はS. cerevisiaeよりC. albicansのN-glycanに強く結合する。よって、側鎖の形状により敗血症モデルにおける作用が異なる可能性がある。そこで、C. albicansに加え、S. cerevisiae、側鎖を欠失したS. cerevisiae(mnn2)、フォスフォマンナンおよびa1,3-マンナンを欠失したS. cerevisiae(mnn1, 4)および側鎖の80%がa-マンナンより成るC. lusitaniaeから精製したN-glycan等を用いて、作用と糖鎖構造の相関を明らかにする。また、敗血症誘導時におけるC. albicans糖鎖によるIL-10産生昂進が後期免疫抑制の解除に必要であるかをIL-10中和抗体を投与し検討する。
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Causes of Carryover |
動物飼育室移転の為、SIGNR1の働きを同欠失マウスを用いて検討する事ができなかった。また、様々な側鎖構造を持つ酵母糖鎖を用た当該作用を担う糖鎖構造の絞り込みも、SIGNR1の関与を明確にした後に行う予定であった為、次年度に延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の計画を、当初の予定通り進める。
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Research Products
(4 results)