2016 Fiscal Year Research-status Report
能動的DNA脱メチル化を介したメモリーB細胞分化制御
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16K08738
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 伸弥 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教(常勤) (80462703)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | B細胞分化 / B細胞ホメオスターシス / B細胞自己寛容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画申請で述べた通り、DNA脱メチル化酵素であるTetのB細胞における役割を解明する為、B細胞特異的にCreリコンビナーゼが発現するCD19creマウスとTet floxマウスを交配することにより、B細胞における各Tet分子の機能の解析を試みた。まず、Tet1, Tet2, Tet3をそれぞれ単独で欠損したマウスにおける骨髄中のB細胞初期分化を検討したが、顕著な異常は見られなかった。また、末梢リンパ組織におけるB細胞を解析したところ、Tet2欠損もしくは、Tet3欠損マウスでそれぞれ、脾臓のmarginal zone (MZ) B細胞の割合、絶対数が、3割程度減少していることが、明らかとなった。一方で、B220陽性CD93陰性画分に存在し、CD23、補体レセプター共陰性の未成熟型B細胞 [Double negaive (DN) 未成熟B細胞]の割合、絶対数が、微増していることが示された。この傾向は、週齢を経たマウスで顕著であった。以上のことから、Tet2、Tet3は、重複した機能があることが示唆された。よって、それら二重欠損マウスの作製を試みた。同様に解析した結果、B細胞初期分化は、ほぼ正常であったが、脾臓、リンパ節の腫脹が認められた。血中抗体価を測定したところ、IgG1、IgAは、野生型と比べて減少し、他のアイソタイプ抗体に関しては、増加を示した。さらに、末梢におけるB細胞集団について解析したところ、MZ B細胞は、ほぼ消失し、一方で、DN未成熟B細胞は、著明に増加していることが明らかとなった。また、Tet欠損B細胞の細胞表面分子の発現パターンを解析することによって、これらB細胞は、副刺激分子の発現が亢進しており、活性化型の形質を有することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた通り、Tetファミリー分子は、重複した役割を持っているものと考えられる。また、我々の実験結果から、Tet2、Tet3の二重欠損マウスは、自己免疫様の形質を呈することが分かってきた。B細胞特異的マウスモデルでこのような急性自己免疫様症状を示すモデルは、ほとんど見当たらない。よって、Tetは、B細胞のホメオスターシス、自己寛容に重大な役割を担っていることが明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の実験結果から、Tetは、B細胞のホメオスターシス、自己寛容の維持に必須な役割を担っているようである。当初の計画では、B細胞の末梢分化に焦点を当て、その機能を解析する予定であった。これまでの実験結果を考慮すると、予備実験で得られたデータは、Tet欠損による二次的効果によるものである可能性も示唆される。末梢B細胞分化におけるTetの役割については、計画通り実施しつつ、今後は、末梢分化に限らず、ホメオスターシス、自己寛容といったB細胞が関係する他の免疫学的現象におけるTetの役割についても検討を行っていく方針である。
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