2017 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫性膵炎様病態自然発症マウスモデルを用いた病態制御機構の解明
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16K08740
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柴田 健輔 九州大学, 医学研究院, 助教 (50529972)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 疾患モデル動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis)(以下AIPと称する)は膵臓導管周囲を中心とする著名なリンパ球や形質細胞の浸潤と病変部位の繊維化、高immunoglobulin G(IgG)血症、そして自己抗体の存在を特徴とする疾患であるがその病態発症機構は不明である。近年我々はヒトAIP様病態を自然発症するマウスを見出し、abT細胞が病態形成に必須であることを明らかにしている。そこで本研究では、当該マウスモデルを用いて病原性abT細胞の同定と過剰産生される抗体の病態形成への関与の解明を目指すこと、そして臨床応用を考えてヒトAIP患者における病態メカニズムの解明を目指している。 平成28年度までにBcl11bΔRag1-Creマウスにおける致死性の自己免疫疾患にはabT細胞が必須であること、そしてabT細胞の中でもMR1拘束性ab T細胞が病態形成に関わることを明らかにしてきた。 平成29年度は以下の項目に関して研究を進めた。 1) 病原性MR1拘束性ab T細胞の同定、2) 自己抗体産生B細胞の病態への関与の解析、3) AIP患者の解析
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1) 病原性MR1拘束性abT細胞細胞の同定 : 病原性MR1拘束性abT細胞を同定するため、特異的検出試薬 (マウスMR1 tetramer)を作成した。それを用いて病態を発症したBcl11bΔRag1-Creマウスの末梢血および炎症組織において単細胞分離によるT細胞受容体の同定を試みた。その結果、これまでに6 種類のT細胞受容体を同定しT細胞cloneの樹立を試みている。こちらに関してcloning方法の検討が必要であったことから従来の計画より遅れいている。 2) 自己抗体産生B細胞の病態への関与の解析 : Bcl11bΔRag1-Creマウスは致死性の自己免疫性疾患を発症し膵臓に慢性炎症を引き起こすこと、そして膵臓に対する自己抗原が産生されることが明らかとなっている。そこで自己抗体の病態への関与を明らかにするため、B細胞を欠損したBcl11bΔRag1-Creマウスを樹立した。その結果、B細胞欠損により優位な生存率の延長が認められたことから病態への関与が示唆された。こちらに関しては計画通りに進んでいる。 3) AIP患者の解析 : 当該マウスはAIP様病態を自然発症することから、次にAIP患者におけるMR1拘束性abT細胞の病態への関与を考えた。そこでヒトMR1拘束性abT細胞特異的検出試薬を作成し、AIP患者の末梢血におけるMR1拘束性abT細胞の頻度を調べた。その結果健常人と比較してその頻度が上昇することを見出した。現在その機能解析を進めている。こちらに関してはヒト検体の収集に時間を要しているため遅れいている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の平成29年度までの結果を踏まえ、本年度は以下の項目に関して解析を進める。 1) 病原性MR1拘束性abT細胞の機能解析 : 平成29年度までに病態への関与が示唆されるMR1拘束性abT細胞のT細胞受容体を同定している。そこでそれらの情報を用いてreporter cell lineにT細胞受容体を遺伝子導入することでT細胞cloneを樹立する。そして、既に樹立しているマウスMR1発現腫瘍株を抗原提示細胞として用い、認識抗原の同定を試みる。 2) AIP患者のMR1拘束性abT細胞の解析 : 平成29年度までにAIP患者において健常人と比較してMR1拘束性abT細胞の頻度が上昇することを明らかにしている。そこで次にAIP患者の病態におけるMR1拘束性abT細胞の関与を調べるため、ステロイド治療後に再発する患者と寛解する患者における頻度を比較する。
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Causes of Carryover |
研究の進行の遅延により、当該年度に予定していた実験を次年度に持ち越したため。
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