2017 Fiscal Year Research-status Report
癌促進C5a-C5a受容体系の臨床を含めた総合的解析および癌標的治療法への応用
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16K08741
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
今村 隆寿 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (20176499)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 癌 / C5a受容体 / アルザス反応 / 増殖 / MDSC |
Outline of Annual Research Achievements |
アルザス反応によるC5a産生の癌増殖促進効果の総合的解析 内因性C5aによる癌細胞への作用を調べるために、自己免疫病のモデル炎症であり免疫複合体による補体系活性化引き起こされるアルザス反応の効果を解析した。Balb/cマウスの皮内に同種同系統のマウス腎臓癌細胞のRenca細胞を抗BSA抗体と一緒に注射し、抗原であるBSAの尾静脈注射で癌接種部にアルザス反応を誘導した。コントロール細胞に比較してC5a受容体(C5aR)発現細胞の方がアルザス反応によって腫瘤径が7日目で1.4倍、14日目で1.6倍大きくなった。アルザス反応を誘導しない場合は両細胞の腫瘤の大きさに有意な差はみられなかった。癌接種部皮膚組織標本を抗CD11b抗体と抗Ly6g抗体で蛍光免疫染色し、両抗体に共に陽性の骨髄由来抑制細胞(MDSC)の浸潤を調べると、アルザス反応でC5aR陽性癌細胞および陰性癌細胞接種皮膚で有意に数が増加していたが両癌細胞部での差はみられなかった。ヒト胆管癌細胞HuCCT1細胞をヌードマウスに尾静脈から注射し肺での結節形成を調べると、6週間後にC5aで刺激されたC5a受容体陽性細胞は非刺激C5a受容体陽性細胞やC5a刺激C5a受容体陰性細胞に比較して大きくかつ数倍の数の肺結節を形成した。 以上より、C5aは数日の培養での癌増殖促進作用は観察されていないが、C5a-C5aR系が潜在的に癌増殖亢進作用をもち、アルザス反応部ではC5aによるCD8+ T細胞の抗腫瘍反応を抑制するMDSC細胞の動員も関与して腫瘤形成亢進が認められたと考えられた。この作用は自己免疫病をもつ癌患者の悪い予後に関連する機序の一つとして提唱される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Renca細胞は腎臓癌由来なので腎被膜下に接種して転移を調べたが、実験技術的に困難で一定の結果を得られなかった。そこで、皮膚に接種し同時にアルザス反応を誘導して影響を解析したところ、上記のようにC5a受容体依存性に浸潤と腫瘍形成亢進作用がアルザス反応でみられた。さらに、抗腫瘍反応を抑制するMDSCの浸潤を調べて癌微小環境も癌促進性に形成されていることが明らかになった。 近赤外線標識細胞を使った転移の実験は長期の観察が必要であるので癌細胞を標識する赤外線probeの寿命の関係で不能であることがわかった。しかし、アルザス反応による癌促進作用は内因性C5aによる癌促進を確認するだけではなく、アルザス反応は自己免疫病のモデル炎症であることから全身性エリテマトーデスや、慢性関節リウマチなどの自己免疫患者が癌を発症した場合に生存率が低い理由の一つを解明することができたので、この実験の目的はほぼ達成されたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策)5a-C5a受容体系をターゲットにした治療法の試み 1.上記のマウスにコブラ毒因子(QUIDEL)を注射して補体系を枯渇させ、移植癌の増殖、浸潤への効果を調べる。 2.上記の感作マウスに抗C5抗体処理し、癌細胞を皮下移植してアルザス反応を誘導する。あるいは癌細胞移植部にC5a受容体拮抗剤(Calbiochem)やプロテアーゼ阻害剤(アプロチニン)を共存させる。これらの処置による癌細胞増殖・浸潤抑制効果を調べる。 3.各々の腫瘍組織を上記の様に免疫染色し、浸潤細胞や血管増生への抑制効果を解析する。 これにより、C5a-C5a受容体が癌治療の標的として有用であることが示される。
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Causes of Carryover |
近赤外線標識細胞を使った転移の実験は結果が出るのに長期の観察が必要であった。そのため、癌細胞を標識する赤外線probeの寿命の関係で不能であることがわかった。それで、この実験を中止したので、マウス購入・飼育費用が不要となった。また、アルザス反応による癌浸潤と成長への亢進作用が得られたので、これらの結果をまとめて論文にして発表することにした。このため癌部での血管形成の免疫染色による解析は行わず、関連する試薬等を購入しなかった。これらの事情で次年度使用額が生じた。繰り越し金額を次年度施行予定の動物実験と試薬購入に必要な金額の増額に充てる。 使用計画 次年度は動物実験のためのマウス購入費、飼育費、および培養関連試薬、抗C5a受容体抗体、C5a受容体拮抗剤などの実験試薬の購入に、繰り越し金額の研究費を充てる。また、論文を投稿したジャーナルから指示された論文のreviseに必要な実験の費用に使用する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Inhibition of gingipains and Porphyromonas gingivalis growth andbiofilm formation by prenyl flavonoids.2017
Author(s)
Kariu, T., Nakao, R., Ikeda, T., Nakashima, K., Potempa, J., & Imamura, T.
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Journal Title
J. Periotont. Res.
Volume: 52
Pages: 89-96
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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