2017 Fiscal Year Research-status Report
マイクロRNA導入マウス心筋症におけるヘキソキナーゼ2とMAS受容体シグナル解析
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16K08748
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
岩本 隆司 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (60223426)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市原 正智 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (00314013)
小形 岳寛 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10402877)
野田 明子 中部大学, 臨床検査技術教育・実習センター, 教授 (80252287)
上田 潤 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (80450394)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロRNA / トランスジェニックマウス / IGF1受容体 / アンジオテンシン変換酵素 / 酸化還元ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度の研究でHK2あるいはMAS1を心筋特異的に発現したトランスジェニックマウス(Tg)を複数系統樹立して、miR-143/miR-145トランスジェニックマウス(miRTG)と交配したが、miRTGをレスキューする事は出来なかった。そこで29年度は研究計画を見直して、以下の様に研究を遂行した。最近miR-143とmiR-145の標的として解析がされているインスリン様成長因子1受容体(IGF1R)の発現を調べた所、意外にも受容体やその下流のAKTのリン酸化は亢進していた。面白い事にACE阻害剤のカプトプリルの投与で、IGF1Rのリン酸化は有意に抑制された。カプトプリルはこのマウスの病態を改善させることが判っており、ACEの発現増強とIGF1Rのリン酸化は症状の重い系統で観察されるので、ACE/IGF1R axisが本マウスの病態に大きく関与している可能性が示唆された。心臓におけるIGF1Rは動物実験では血圧負荷等の病的ストレスを抑制する事が示されている。しかしヒトでは高濃度のIGF1が心不全のrisk factorになるという報告もあり不明な点が多く、miRTGは心不全におけるIGF1Rを介したシグナルの新しい機能解析モデルになると思われる。また、本マウスで活性酸素を反映するTBARSアッセイを行った所、野生型と殆ど差は見られなかった。また酸化還元状態の指標であるGSH/GSSGの比はmiRTGでは増加しており、むしろ還元状態にシフトしていると考えられた。そこで抗酸化ストレスのマスターレギュレーターであるNrf2欠損マウスと交配した所、生存期間の低下は認められなかった。 一般的に酸化ストレスが心不全の憎悪因子である事は広く知られているが、抗酸化剤の治療効果はあまり芳しくない事から、本マウスの病態解析は心筋症の新しい分子メカニズムの発見に繋がる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していたHK2とMAS1の補填によるmiRTGのレスキュー実験は成功しなかったので、大きく研究の方向転換を余儀なくされた。依然として何故心筋細胞におけるmiR-143の高発現がACEの強発現や心筋症を起こすかの分子メカニズムの解明に至っていない。しかしながら、病態シグナルに関する新しい知見を複数得ることが出来て本マウスの病態の理解の糸口をつかんだと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ACEやIGF1Rは重要な分子でありながら、ACEからIGF1Rへのシグナルは殆ど注目されていない。特にACE阻害剤はARBと共に現代の降圧薬のゴールドスタンダードであり、且つ拡張型心筋症の第一選択薬であるが、心筋症における薬理メカニズムはあまり解っていない。今後ARBのmiRTGへの効果も検討し、ACE/IGF1Rのシグナルが如何に心筋症に関与しているかを明らかにする。 また、miR-143の強発現が如何なるメカニズムでmiRTGの心臓のACEの発現増強、および心筋症を招いているかを引き続き検討する。更にどのようなシグナルでmiRTG心が還元状態になっているかを解析するとともに、この還元状態が病態に如何なる影響を与えているかを検討する。これら一連の解析が心筋症の発症機序に新しい知見をもたらすと考える。 また、現在までの研究の課程で、炎症に関与するある分子がmiR-143の新規標的である可能性を示唆するデータを得る事が出来た。30年度はこの分子の本マウス病態における関与も解析していく。
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Causes of Carryover |
マウスの飼育数を予定より減らす事が出来たため29年度の使用額が少なくなった。この差分は30年度に予定している新規miR-143の標的分子の解析に活用する。
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Research Products
(7 results)