2017 Fiscal Year Research-status Report
miRNAノックダウン住血吸虫を用いた細胞外小胞における性成熟への機能解析
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16K08756
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
熊谷 貴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (40369054)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 住血吸虫 / miR-Bantam / Tough Decoy / miRNA / レンチウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、日本住血吸虫特異的なmiRNAを標的としたTough Decoy miRNA knockdownシステムを構築した。このシステムではレンチウイルス発現型の特異miRNAノックダウンベクターであり、標的となるmiRNAの配列にギャップを持った相同配列を発現させ、miRNA複合体の形成を競合的に阻害することで、miRNAの機能を抑制する。今回、成虫がペアリングの後の性成熟に関係するmiRNAの一つであるmiR-Bantamを標的としたTough Decoy miRNA発現ベクターを使って、実際に日本住血吸虫に遺伝子導入を行った。 初めに、感染後すぐの幼虫であるシストソミュラを使って、遺伝子導入をレンチウイルスを用いて行った。導入後にTough Decoy miR-Bantamの発現をmRNAレベルで確認したところ、導入虫体群でのみ発現が確認された。次に、過去に報告のあるmiRNAの標的候補遺伝子の発現を調べた。候補として用いたのは、Serine-arginine repressor、FUS-interacting serine-arginine-rich protein 1、Smad1などの発現を調べた。レンチウイルスによる遺伝子導入を行なった結果、候補遺伝子のうち、Serine-arginine repressor、FUS-interacting serine-arginine-rich protein 1の遺伝子発現の上昇が導入群でのみ観察された。この結果は、標的遺伝子の遺伝子抑制を行うmiRNAの働きを抑制したと考えられる。一方で、Smad1については、発現変動は観察されなかった。この事から、2つの候補遺伝子がmiR-Bantamの標的になっている可能性が考えられた。miR-Bantamは成熟に関わるmiRNAなので、今後は成虫を標的にした実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度作成したTough Decoy miR-Bantam レンチベクターが実際に日本住血吸虫の中で機能するかについての検討を行った。レンチウイルスを導入させた住血吸虫シストソミュラの中では、U6プロモーターを介した小分子RNAとしての発現が確認され、実際にベクターが機能していることがわかった。しかし、直接的なmiR-Bantamの発現には影響していなかった。しかし、miR-Bantamの標的候補遺伝子を検索し、その遺伝子発現を調べたところ発現が増加しており、実際に発現を抑制する標的miRNAの機能を阻害していることが考えられた。このことからも、今回作成したベクターはmiRNA抑制に機能していると考えられた。このように今年度の目標であるTough Decoy miRNAレンチウイルスベクターの機能を評価できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ベクターの作製、実際の発現、標的miRNAの機能阻害が観察されたが、まだシストソミュラという幼虫でしか実験を行えていない、今後は、成虫を標的としたmiRNA阻害を誘導し、実際にmiR-Bantamが阻害されることで、どのような表現型が観察されるか、細胞外小胞の中のmiR-Bantamに影響が出るのか、細胞外小胞中のmiRNAの機能についてもさらに形態観察等を通して調べていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度、維持している住血吸虫のライフサイクルが何度かストップし、成虫を使った実験を行うことができず、その分使用するはずだった消耗品費用等に残額が生じたため。
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