2016 Fiscal Year Research-status Report
マラリア原虫のヘモグロビン輸送・代謝における寄生胞膜分子の機能解析
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16K08760
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
入子 英幸 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (60346674)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マラリア / 寄生胞膜 / ヘモグロビン |
Outline of Annual Research Achievements |
マラリア原虫は「寄生胞膜」の中に身を潜めながら、赤血球に寄生している。この寄生胞膜は、宿主免疫応答・環境ストレスに対する障壁として機能するが、その一方で、栄養源であるヘモグロビンから原虫を隔離する。そのため、マラリア原虫は、サイトストームと呼ばれる特徴的な膜構造を形成し、ヘモグロビンを取り込み、代謝の場である食胞へと輸送する。これまでに申請者は、マラリア原虫の生殖母体期に寄生胞膜に発現するETRAMP10.3 (Early TRAnscribed Membrane Protein 10.3)が、サイトストームと輸送小胞に移行することを見出した。本研究では、熱帯熱マラリア原虫の生殖母体期に着目し、ヘモグロビン輸送に関連する膜構造に局在する分子群を同定し、それらのヘモグロビン輸送における機能を明らかにすることを目的としている。 まず、生殖母体期の指標分子Pfs16の抗体を作成するために、生殖母体含有感染赤血球から抽出したcDNAを鋳型としてN末端側の分泌シグナルを除くほぼ全長の配列をPCR増幅した。コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系ベクターに増幅した遺伝子産物を組込み、GST融合組換えタンパク質(rPfs16)として大量合成した。合成したrPfs16を用いてウサギまたはマウスを免疫して抗血清を作成した。次に、熱帯熱マラリア原虫3D7株の赤血球期原虫を培養して誘導した生殖母体を用いて塗抹標本を作成し、間接蛍光抗体法によりPfs16抗体が生殖母体に特異的に反応することを確認した。現在、ETRAMPファミリー(13種類)の特異抗体、Pfs16抗体を用いた二重染色により、生殖母体期に発現する分子の検索を行っている。また、生殖母体を含む感染赤血球を材料として、LR-White Resinを用いた免疫電子顕微鏡用サンプルを作製し、電子顕微鏡を用いた標的分子の詳細な局在解析の準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱帯熱マラリア原虫の生殖母体期の指標となるPfs16の特異抗体の作製に成功した。Pfs16抗体を用いた二重染色により、生殖母体期におけるETRAMPファミリーの発現を解析することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、作製した抗体を用いて免疫電顕を行い、電子顕微鏡レベルの分子局在の解析を行う。また、生殖母体期のヘモグロビン輸送の膜構造に局在するETRAMPを選択し、遺伝子工学的アプローチにより、ヘモグロビン輸送における機能を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
実験材料(培養した熱帯熱マラリア原虫)調製に時間がかかったため、2017年3月に予定していた実験の一部が延期となり、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年4月に実験材料の調製が完了したため、順次、実験を開始している。
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