2017 Fiscal Year Research-status Report
転写因子IRF8の発現抑制を介したマラリアによる樹状細胞分化阻害メカニズムの解明
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16K08764
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
市野 素英 横浜市立大学, 医学部, 助教 (60271368)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | マラリア / 樹状細胞 / 免疫抑制 / IRF8 |
Outline of Annual Research Achievements |
寄生虫感染症のマラリアでは樹状細胞(DC)をはじめとする宿主のさまざまな免疫細胞の機能が抑制され、マラリア原虫が免疫系から回避していると考えられている。しかし、その免疫抑制メカニズムは十分に理解されていない。本研究では転写因子Interferon Regulatory Factor 8 (IRF8)の発現抑制を伴うDCの分化阻害に関与する宿主タンパク質分子の同定を目指し、マウスの骨髄細胞からDCをFlt3L存在下にin vitroで培養する系をこれまでに確立してきた。 IRF8はDCの中のcDCサブセットの一つであるcDC1の分化や機能にとくに重要な役割を果たしており、またミエロイド系前駆細胞の増殖や好中球の分化を抑制する転写因子でもある。Irf8欠損マウスでは好中球増多や脾腫を伴う慢性骨髄性白血病(CML)様の病態を呈することが知られており、さらに、CMLの原因遺伝子BCR-ABLを骨髄細胞に導入して作製したマウスCMLモデルにおいては、BCR-ABL陽性細胞でDCの分化不全が認められる。これまでに、BCR-ABL陰性細胞でもDCの分化不全の起こることを明らかにしつつあり、BCR-ABL陽性細胞の産生する液性因子がこの事象に関与することを示唆するデータを得ている。両疾患におけるIRF8発現抑制の分子機構の共通性に現在着目しており、IRF8発現抑制とDC分化阻害に関与する因子を明らかにするために、細胞表面分子ばかりでなく液性因子にも視野を広げ、マウスマラリアモデルとマウスCMLモデルをよく対比しながらDC培養系を利用して詳細な解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではこれまでにマラリアのマウスモデルにおいてIRF8の発現減少を伴うDCの分化阻害を見出しており、これをマラリアによる免疫抑制の根幹をなすものと捉えている。マラリアによる免疫抑制に関与する宿主タンパク質分子を明らかにすることを目的として、マウス骨髄細胞からDCをin vitroで培養する系を確立しており、マラリア原虫Plasmodium. berghei感染赤血球の存在下/非存在下で、DCの抗原提示能や遺伝子発現など、DC分化に対する影響について解析を進めてきた。 マウスCMLモデルでもIRF8の発現減少を伴うDCの分化阻害が見出されていることは、異なる疾患ではあるが、マラリアとCMLでDCの分化阻害に共通のメカニズムが存在する可能性を示唆するものである。近年、CMLの原因遺伝子であるBCR-ABL陽性細胞の産生する液性因子によりDCへの分化阻害が起こることが明らかにされつつあり、探索分子としてこれまでに着目してきた細胞表面分子ばかりでなく、液性因子による分化抑制まで視野を広げている。以上のように、研究計画に基づきながらも研究は広がりを見せており、現在はマラリアとCMLで見られるDC分化不全の共通性にとくに着目し、これをタンパク質分子の探索の手がかりとして順調に研究を展開している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度は、マラリアによるIRF8の発現低下を伴うDCの分化阻害を引き起こす免疫抑制メカニズムを明らかにするために、抑制分子の探索を押し進めながら、ノックアウトマウスの入手や作製、あるいは特異抗体の入手や作製などの解析ツールを可能な限り揃えていく。そして、これまでに確立したDC培養系を利用し、IRF8の発現抑制を伴うDCの分化阻害に関与する宿主タンパク質分子(抑制分子)を同定する。その上で、マラリア原虫感染赤血球が発揮する免疫抑制を解除する方法を立案し(抗体投与等による抑制分子のシグナル伝達阻害など)、感染赤血球存在下におけるDC培養の系を用いて、IRF8の発現回復とDCの機能的分化誘導が可能であるかを検証する。さらに、マラリア原虫感染実験を利用して、免疫抑制分子の制御による抗マラリア免疫応答の誘導をin vivoでも検証していく。マラリアとCMLで見られるIRF8の発現低下を伴うDCの分化阻害にどのような共通のメカニズムが存在するか、また、原虫感染赤血球の抑制の作用点が血球系細胞分化のどの段階であるかについても検討を加え、研究結果を年度内に取りまとめて論文化し報告していきたい。
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Causes of Carryover |
理由:初年度は採択が年度途中の平成28年10月であったため、予定通りに研究予算を消費することができなかった。研究2年目はおおむね予定通り研究予算を使用することができたが、初年度の影響が残り、結果的に使用額が予定と異なることになった。 使用計画:3年度の研究計画に基づきつつ研究を発展させ、研究期間の3ヶ年の予定通りに研究予算を使用する。
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Research Products
(1 results)