2016 Fiscal Year Research-status Report
赤痢アメーバに特異的な脂質を介した選択的輸送システムの解明
Project/Area Number |
16K08768
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
中野 由美子 (斉藤由美子) 国立感染症研究所, 寄生動物部, 主任研究官 (30321764)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Rab GTPase / 小胞体 / 輸送シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞表面へのタンパク質輸送には、特定の輸送シグナルや脂質を介した輸送機構の存在が報告されているが、細胞内の輸送経路に着目した研究は少ない。申請者は、赤痢アメーバの表面タンパク質の輸送には、膜融合の分子スイッチであるRab8 GTPaseに依存した経路と非依存的な経路があることを発見した。EhRab8依存的に輸送される表面タンパク質は、赤痢アメーバの病原性に重要な貪食と細胞接着に必要であった。本年度では、EhRab8依存的な選択的輸送機構の解明を目指すために、EhRab8結合タンパク質の同定を行った。myc-Rab8を発現する形質転換アメーバをクロスリンカーで架橋後に可溶化し、抗myc抗体での共免疫沈降を行ったところ、約35kDaのバンドが得られた。質量解析により共免疫沈降されたタンパク質を同定したところ、酵母Cdc50のホモログが得られた。EhCdc50を大量発現する形質転換アメーバを作製したが、貪食や接着に変化は示さず、EhCdc50は小胞体に局在した。酵母やヒト、リーシュマニア原虫では、Cdc50を大量発現させると複合体を形成する細胞表面のATPaseとともに小胞体にとどまり、細胞表面への輸送が阻害されることが報告されている。そこで赤痢アメーバでも、EhCdc50の大量発現により複合体のATPaseとともに小胞体にとどまっていると考えられた。リーシュマニア原虫ではCdc50とATPaseが小胞体にとどまることにより、細胞外からの薬剤が細胞内に浸透しないなめ、フォスフォコリンアナログ(ミルテフォシン)耐性の表現型を示すことが報告されている。そこで、EhCdc50大量発現赤痢アメーバの薬剤感受性を検討したところ、ミルテフォシン耐性を示すことが分かった。以上の結果によって、EhRab8はCdc50と結合しATPaseを選択的に細胞膜に輸送しているモデルが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はEhRab8の結合タンパク質を同定することにより、細胞表面に輸送されるタンパク質の候補を単離することに成功した。しかし、一方で、EhCdc50を大量発現させてEhCdc50を小胞体にとどまらせても貪食や細胞接着に変化を示さなかったため、EhRab8によって輸送される接着に必要なタンパク質はEhCdc50ではないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
EhRab8によって輸送される接着に必要なタンパク質を同定するため、次年度は細胞表面全体のタンパク質をビオチン化し、野生型とEhRab8機能欠損の株のプロファイルを比較することにより、EhRab8によって輸送される積み荷タンパク質のより網羅的な同定を試みる。そして、複数の積み荷候補タンパク質に共通の輸送モチーフの同定を行う。
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Causes of Carryover |
海外との共同研究グラントを使用して、国際共同研究の打ち合わせの旅費を支出したため約30万円の繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
余剰金は、今年度の旅費として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)