2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K08770
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
八尋 錦之助 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (80345024)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞死 / 細菌毒素 / 阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管出血性大腸菌(EHEC)は、経口感染により腸管に達し、定着・増殖に伴う毒素(志賀毒素、サブチラーゼ毒素等)産生し、下痢症、溶血性尿毒症症候群等を引き起こし、致死に至る場合もある。重篤なEHEC 感染症に対する治療は統一された処置法が確立されていない。これまでの病原細菌を対象にした感染症治療は、抗生剤を用いたものが多く、耐性菌の出現は今日でも大きな治療上の問題となっている。中でも、EHECは前述のように抗生剤による溶菌は強毒な毒素の放出が伴うなどの問題も多い。本研究は、これからも頻発することが予想されるEHEC 感染症の重症化にドラックリポジショニングを利用した新たな治療法の確立を目指すことに特色と意義がある。即ち、ドラックリポジショニング「ヒトでの安全性・体内動態が十分の証明されている既承認薬と一部の開発中止(途中)品の新しい薬理効果を発見し、この薬剤を別の疾患治療薬として適応拡大する」の立場は、本研究遂行の最大の利点であり、本手法を使うことで、薬剤の研究開発費・リスクの軽減と開発期間の短縮、臨床利用へのハードルを下げることができる。 本年度、計画していた種々の薬剤を用い、毒素の阻害活性に対するスクリーニングを行い、毒素の細胞致死活性を阻害する薬剤を数種見出した。抗癌剤として使用されているPKC 活性化剤は、SubAB の活性だけでなく、志賀毒素の活性も阻害することを見出した。 更に、SubAB の活性を阻害する他の薬剤Aは、抗アポトーシスに働くタンパク質を誘導し、毒性を抑制していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、スクリーニングにより数種類の抗毒素効果を持つ薬剤を見出した。いずれの薬剤も、毒素本来の宿主細胞への結合、その活性を阻害するのではなく、下流の細胞致死阻害に機能する機構を活性化し、細胞致死から回避していることが明らかとなった。また、これら薬剤には、抗菌活性がないことから耐性菌の出現を危惧する必要はない。
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Strategy for Future Research Activity |
抗毒素活性を有する薬剤は、抗癌剤などで使用されているものもあり、長時間の株化された培養細胞への添加は、薬剤だけで細胞障害性を引き起こす。そこで、正常な腸管細胞を用いて評価する必要がある。 その為、来年度の前半にマウスの腸管から幹細胞を分離・培養し腸管オルガノイドを形成させる系を樹立する。この実験の利点は、vivo に近い状態の細胞を用いて、薬剤の抗毒素活性の有無、阻害メカニズム、腸管への結合様式を明らかにすることが可能であり、今後行う予定の個体レベルでの毒性阻害実験を見据えた、適切な試薬濃度が決定ができる。 また、株化培養細胞における阻害機構が、正常細胞においても反映されるのか、新たなシグナル伝達機構が関与するのかなどの知見を得ることができると期待される。 ただ、腸管オルガノイドはマトリゲル中での培養が必要であることから、薬剤や毒素の添加方法を工夫する必要があると考えている。添加方法が確立すれば、腸管出血性大腸菌を腸管オルガノイドに加え、感染の場をプレート上でも再現でき、感染から細胞障害にいたる過程での阻害薬の有効性を評価できると期待している。
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Research Products
(5 results)