2017 Fiscal Year Research-status Report
腸管出血性大腸菌の完全型一酸化窒素還元酵素による高病原性獲得機構の解明
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16K08771
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
清水 健 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (70312840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 公俊 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (60164703) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腸管出血性大腸菌 / NO消去酵素 / NO還元酵素 / 病原性 / NOセンサー / 重症化 |
Outline of Annual Research Achievements |
EHEC ではNO によって病原因子の発現が抑制され、病原性が低下することが知られている。これらのことから宿主防御系が産生するNO は菌の排除に重要な働きを担っており、この殺菌効果、および病原性抑制効果を消失させるような病原細菌のNO 消去能はその菌自身が持っている病原性の強さ、すなわち感染成立と重症化に直結していると思われる。腸管出血性大腸菌にはそのための3種類のNO消去酵素(NorV, Hmp, Hcp)が存在している。そこで、これらの酵素遺伝子を欠失させた変異EHECを構築して、それぞれのNO消去遺伝子の役割を明らかにした。 その結果、これら3種類のNO消去酵素はNOによって発現誘導されるが、Hcpが最も低い濃度で誘導された。NorVはNOを感知する転写因子であるNorR、HmpとHcpはnsrRが転写を調節していた。 NO濃度が高い状態において、嫌気状態ではNorVがNOによる増殖抑制を解除する役割と菌体内のNO濃度を減少させる役割を担っていた。一方、好気状態ではHmpが増殖抑制を解除する役割と菌体内のNO濃度を低下させる役割を担っていた。また、低いNO濃度の環境では嫌気状態、好気状態共にHcpは菌体内のNO濃度の減少に重要な働きを担っていた。 低濃度のNO環境では、HcpのNO消去活性はHmpに部分的に抑制されていること、また、高濃度のNO環境では、HcpのNO消去活性をHmpが保護していることが明らかになった。このことはHcpとHmpが協調的に働いてNOを消去していることを示唆していた。 以上のようにEHECは嫌気状態、好気状態、さらに高濃度、あるいは低濃度のNO環境に応じて、保持しているNO消去酵素を使い分け、さらに協調的に使用することによって、宿主が病原細菌を封じ込めるために産生するNOを効果的に消去していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は腸管出血性大腸菌の3種類あるNO消去酵素の嫌気条件と好気条件、さらに高濃度と低濃度のNO存在条件における役割を解明することが目的だったので、現在までにその解明はほぼ終わっているので、概ね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験等を用いて、腸管内での病原性、NO抵抗性をNO消去酵素の有無で評価していく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 実験が順調に進み、想定していた金額よりも少ない金額で計画が達成できたため。 (使用計画) 翌年度分に次年度使用分を合わせて実験する予定である。
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Research Products
(5 results)