2017 Fiscal Year Research-status Report
E3ユビキチンリガーゼによるインフラマソーム活性制御
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16K08772
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
鈴木 志穂 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (80444074)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Inflammasome / E3ユビキチンリガーゼ / 炎症応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、cIAPs-siRNAノックダウン解析およびCRISPR-Cas9システムにより作出したcIAPs-KOマクロファージの解析の結果、インフラマソームの活性化にcellular inhibitor of apoptosis protein 1 および 2 (cIAP1、cIAP2) の発現が重要であることを明らかにした。マクロファージ内ではGLMNとcIAPが共局在しており、さらにGST-pulldown法によりGLMNがcIAP1とcIAP2のRING domainに特異的に結合することを明らかにした。また、cIAPs-GLMN間相互作用にはcIAPs RING domainに位置するセリン残基が重要であることを特定し、同時に、GLMNが結合することによりcIAPの自己ユビキチン化を阻害して、cIAPがもつE3 ubiquitin ligase活性を抑制していることを見出した。更にGLMN-siRNAノックダウン解析の結果、GLMNがインフラマソームの負の制御因子として機能することを明らかにした。赤痢菌はIII型分泌機構からE3 ubiquitin ligase活性をもつエフェクタータンパク質IpaH7.8を分泌し、インフラマソームの活性化およびその結果引き起こされるマクロファージ細胞死(パイロトーシス)誘導を激化させる。パイロトーシスの亢進と菌体増殖との間には相関性があり、本研究により得られた成果は、自らの感染促進のために宿主に対して激しい炎症応答を誘導する赤痢菌特有のユニークな感染戦略を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況については、前年度に引き続き、特に問題なく予定通りに進行している。本年度は、CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子ノックアウト法の確立に成功したことが大きい。条件検討を重ね、低コストで効率の高い手法を確立することができた。これにより、短期間で複数のノックアウト細胞を作製することが可能になり、研究がスムーズに実施できるようになった。一方で現状の問題点として、研究の標的としている遺伝子のうちの1つはノックアウトが致死性であり、本遺伝子についてはノックアウトマウス及び細胞を得ることが難しいことが判明した。従って、なんらかの代替となる実験手法の確立を検討する必要がある。代替手法の確立が難しい場合には、heterozygous miceとsiRNAノックダウンを併用して、著しく高効率の遺伝子ノックダウンを成功させる必要がある。これは、今後の検討すべき課題である。しかしながら、本年度は、得られた研究成果の情報発信として、これまでの研究データを論文にまとめ、海外学術雑誌EMBO reportsに投稿し、最終的に受理された。本論文は2018年1月に公開され、プレスリリース発表を行った。以上のことから、国内外に対する研究成果の発信という点においても、進展は順調と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の研究方針として、インフラマソーム活性時におけるインフラマソーム構成タンパク質およびその他のインフラマソーム活性化関連タンパク質における、より詳細なユビキチン修飾の検証を行う。ASC, pro-caspase 1などのインフラマソーム構成タンパク質のユビキチン化については既報の論文で報告例があるが、成功した例は未だ限られている。我々の実験においても検出の難易度が著しく高い傾向がみられ、未だ成功していない。今後、条件検討を重ね、インフラマソーム構成タンパク質のユビキチン化とみられているものが偽陽性ではなく確実であるかを検証する必要がある。次に追加を予定している実験項目として、当初から実験で取り扱っていた赤痢菌、サルモネラ菌、緑膿菌に加え、歯周病原因菌のいくつかを検証することを考えている。歯周病原因菌とインフラマソームとの関連性については、腸管感染性病原細菌にくらべ著しく研究が遅れていることから研究成果の新規性が高い。そのうえ、今後高齢化社会が進むに伴い歯周病治療法・予防法の重要性はさらに高くなっていくことが予想される。加えて、所属先である東京医科歯科大学は豊富な歯周病関連の知識、研究試料やノウハウをもつ。従って、新規の歯周病治療法・予防法の手がかりを得ることを目的とし、本研究計画と歯周病研究分野を融合させて、歯周病発生とインフラマソームとの関連性を検証することは、研究の意義が大きいと考えている。また本年度は、主に国際学術雑誌での論文発表という形で、国際的に研究成果の発信をおこなったが、国内外における学会での研究発表はこれからの予定であり、主に来年度行うことを予定している。来年度は、国内外の学会に積極的に参加・発表を行い、本研究成果を広く情報発信したい。
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Causes of Carryover |
2018年1月にEMBO reportsに公開された論文の論文掲載料2340.00ユーロ(税込2784.60ユーロ:日本円換算で40万円弱)の支払いを計上していたが、本年度中にin voiceは届いたが引き落としがまだであるため、この分の予算を次年度に繰り越した。また、当初、学会での本研究成果の発表を予定していたが、論文公開とのスケジュール調整の結果、学会発表を次年度に変更したため、発表に関わる学会参加費と旅費を次年度に繰り越した。また、授業・学生実習のスケジュールおよび予算執行の事務的理由から、本年度1-3月の実験計画の一部を次年度に変更し、それに伴い一部の試薬と物品を次年度以降の購入に変更した。繰り越した予算額は、次年度中に全て使用する予定である。
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Remarks |
プレス通知資料(研究成果) 平成29年12月4日 国立大学法人 東京医科歯科大学、国立大学法人 千葉大学
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