2018 Fiscal Year Research-status Report
E3ユビキチンリガーゼによるインフラマソーム活性制御
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16K08772
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
鈴木 志穂 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (80444074)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インフラマソーム / E3ユビキチンリガーゼ / 炎症応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、プロジェクト開始時点から感染実験に用いていた腸管粘膜感染性病原細菌(赤痢菌、サルモネラ菌、緑膿菌)に加え、歯周病原因細菌(Porphyromonas gingivalis, Tannerella forsythensis、Prevotella intermedia、Aggregatibacter actinomycetemcomitansなど)に対するインフラマソームの応答を検証した。マウス骨髄マクロファージを用いたin vitro感染実験により検証したところ、このうちの複数の歯周病原因細菌において感染によってインフラマソーム活性化を誘導するもの、インフラマソーム活性化が認められないものがあり、引き続き検証を進めている。歯周病原因細菌とインフラマソームとの関連性については、腸管感染性病原細菌にくらべ著しく研究が遅れており、得られる研究成果の新規性が高い。そのうえ、今後高齢化社会が進むに伴い歯周病治療法・予防法の重要性はさらに高くなっていくことが予想される。従って、歯周病とインフラマソームとの関連性を検証することは、新規の歯周病治療法・予防法の手がかりにつながる可能性が期待でき、研究の意義が大きい。研究成果の公表については、昨年度は国際学術雑誌での論文発表という形で国際的に研究成果の発信をおこなったが、今年度は日本免疫学会、あわじしま感染症・免疫フォーラムにて本研究プロジェクトにより得られた研究成果の発表を行うことにより情報発信を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの本研究課題の進捗状況については、当初の計画以上に進展していると考えている。これまでの実験により、インフラマソームの活性化には、cellular inhibitor of apoptosis protein 1 および 2 (cIAP1、cIAP2) が重要な役割を担っていることを明らかにした。cIAP1と cIAP2はGLMNと直接相互作用することによりインフラマソームの活性をコントロールすることを証明し、cIAPsのRINGドメインに位置する特定のセリン残基が相互作用に重要であることを見出した。また、cIAP1とcIAP2はE3 ユビキチンリガーゼであるが、GLMNが結合しマスキングすることでcIAPの自己ユビキチン化を阻害し、cIAPがもつE3 ユビキチンリガーゼ活性を抑制しているメカニズムを明らかにした。これらの研究成果により、本研究課題の目的はほぼ達成できていると判断できる。 本研究課題の採択期間中に所属組織の変更があり、異動先である東京医科歯科大学は歯学関連の充実した研究基盤を有していることから、この研究環境を利用して、研究対象とする病原細菌を、当初計画していた腸管粘膜感染性病原細菌に加え一連の歯周病関連細菌に拡大して研究を実施したことにより、今後の研究展開に有益となる手がかりを得ることができた。以上より、当初の計画以上の有益な研究データを得ることができたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究課題の最終年度であり、予定している研究項目のなかで、これまで試行錯誤したものの難易度が高く実験手法の確立に未だ成功していない 研究項目である、インフラマソームの可視化によるイメージング解析とインフラマソーム構成タンパク質のユビキチン化検出を引き続き試みる。また、今年度の歯周病原因細菌を用いた感染実験の過程で、ある特定の歯周病原因細菌に感染したマクロファージ細胞が非常に特徴的な形態変化と性質を呈する興味深い現象が認められ、今後、本細菌の感染細胞においてどのようなシグナル経路の変化がおこっているのかをRNA-seq解析により網羅的に検証する予定である。さらに来年度は、腸管粘膜感染性病原細菌(赤痢菌、サルモネラ菌、緑膿菌)と、歯周病原因細菌(Porphyromonas gingivalis, Tannerella forsythensis、Prevotella intermedia、Aggregatibacter actinomycetemcomitans)の共感染実験を予定しており、これらの病原細菌のインフラマソームの応答における相互作用を検証する計画である。本実験計画の実施により、歯周病菌をはじめとする口腔環境が腸管免疫や腸管感染症に及ぼす影響について、手がかりを得ることができる。来年度中の研究成果の公表の計画としては、本研究プロジェクトにより得られた研究成果を来年度4月に開催される日本細菌学会にて発表する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究課題の実施により新規のインフラマソーム制御因子の特定に成功したが、より詳細なメカニズムを明らかにすべく、特定した因子が細胞の各シグナル伝達経路に与える影響を包括的に解析するためのトランスクリプトーム解析を次年度実施する予定である。そのためのRNA-seq解析用の予算を次年度に繰り越した。また本研究成果の情報発信として第92回日本細菌学会総会での発表を予定していたが、開催日程が例年行われる3月から4月に変更になり年度を超えるため、その分の経費を繰り越した。
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