2017 Fiscal Year Research-status Report
Role of a VacA receptor in the Helicobacter pylori infection
Project/Area Number |
16K08778
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中野 政之 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (60398005)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ピロリ菌 / VacA |
Outline of Annual Research Achievements |
胃ガンの原因であるピロリ菌の病原因子の1つである空砲化毒素(VacA)の機能解析を行うことを目的として本研究を行った。昨年度までに、VacAがピロリ菌の発ガン因子であるCagAのリン酸化に関与すること、そしてVacAによるCagAのリン酸化にはVacA受容体であるRTPTalphaを介して宿主細胞内のc-Srcタンパク質のリン酸化が関与することが判明している。そこで、本年度は、RPTPalhpaを介したVacAによるCagAのリン酸化の作用機序についての検討を培養細胞であるAZ-521細胞などを用いて解析を行った。はじめに、RPTPalphaに対する特異的なsiRNAを用いてPPTPalphaのタンパク質の発現抑制を行った実験では、VacAによるCagAのリン酸化を顕著の抑制することを確認した。また、RPTPalphaとc-Srcは定常状態では複合体を形成していることが先行研究により推察されている。そこで、精製したVacAを投与することでRPTPalphaとc-Srcの複合体量に何らの影響があるのかを検討したところ、RPTPalpha-Src複合体が減少することが観察され、他方でリン酸化c-Src量についてはVacAの有無にかかわらず大きな違いが認められないことがわかった。このことは、VacAによりc-Srcがリン酸化されることで、RPTPalphaとの結合が解消され、細胞内に遊離するということ示唆するものであると考えており、この認められた複合体量の現象がCagAのリン酸化に関与しているのではないかと推測している。 さらに、マウスを用いた感染実験を行うことでVacAによるCagAのリン酸化についての検証を行うことを試みたが、残念ながらピロリ菌をマウスに感染させることに失敗し、感染実験による検証を行うことができなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までにVacAによる促進されるCagAのリン酸化に関する現象を明らかにしたので、本年度は本現象の作用機序についてより詳細に検証することを目的とした。その作用機序として、c-SrcがVacAによりリン酸化が促進されることでRPTPalphaとの複合体形成が解消され、その結果として細胞質内への遊離をすることでリン酸化c-Srcが他の因子へ効果を発揮する状態になることを示唆する結果を得ている。この発見はVacAによる宿主細胞への新たな効果を示すと同時に、c-Srcのリン酸化への作用機序の一端を示すものであると考えている。しかしながら、この発見した現象がVacによるc-Srcのリン酸化を介したCagAのリン酸化にどのような影響があるのかについては現在も検討を行っているが現状でははっきりとした確証を得るには至っていない。その原因として、本現象を検証するために条件設定に予想以上に時間を費やしてしまったこと、さらに免疫沈降時に使用した抗体の質に問題があったことが挙げられる。そこで、現在は新たな抗体を購入することで本現象のCagAリン酸化への関与について検証を進めている。 また、昨年度は培養を細胞を用いたin vitroでの検証を中心に行ったこともあり、本年度は実験動物を用いた解析を行うことを試みたが、残念ながら使用したピロリ菌自体を実験動物として使用したマウスの胃上皮に感染させることができずに、検証することができなかった。この感染実験は過去に文献で報告された方法に基づいて行ったこともありその原因は不明であるが、手技等に問題があったことも否定出来ないので再度検証することを予定している。今後は使用するマウスの種類やマウスの週令等を変更することで再度検討することを予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究課題の最終年度になるので、最終的な結論を得ることができるような検証を行うことを予定している。特に、本年度の解析で発見したVacA受容体であるRPTPalphaとc-Srcに関する複合体がVacA依存性のCagAリン酸化にどのような役割を担い、そしてどのような作用機序により本現象を促しているのかを明らかにすることで、これまでに発見したVacA依存性のCagAリン酸化の作用機序の詳細の一端を明らかにすることができるものと考えている。その方法として、各種特異的な抗体を用いた免疫沈降法を用いた検証や免疫染色等により解析することを予定している。また、VacAによるCagAのリン酸化の促進は使用する培養細胞によっての違いが認められることもすでに見出しているので、その違いについても検証することを予定してる。その方策として、細胞種によってRPTPalphaの発現量や細胞外ドメインの糖鎖修飾に違いがあることが認められているので、そのことが検証するためのヒントであると考えており、そのため各培養細胞におけるVacAとRPTPalphaとの結合力の違いを検証し、同時にその結合力の違いや糖鎖修飾のパターンがc-Srcのリン酸化やCagAのリン酸化に対してどのような影響をもたらすのかを免疫沈降法などを中心に解析をすすめる。さらに、本年度までは培養細胞を用いたin vitroでの解析が中心となっているために、やはり動物実験等の検証を行うことが必要であると考えている。そのため、本年度もマウスを用いた感染実験を試みたが望ましい結果では無かったので、今回の問題点についてしっかりと精査し、対処することで確実に成果を得ることを目指す。
|
Research Products
(2 results)
-
-
[Presentation] Helicobacter pylori detection by γ-glutamyltranspeptidase- activated Fluorescent probe2017
Author(s)
Akashi T, Matsushima K, Kanda T, Nakano M, Kamiya M, Akazawa Y, Ohtani K, Takeshita F, Nakao K, Ueno Y, Isomoto H
Organizer
UNITED EUROPEAN GASTROENTEROLOGY WEEK Annual Meeting 2017
Int'l Joint Research