2016 Fiscal Year Research-status Report
ファージ由来DNAに注目したA群レンサ球菌のマクロライド耐性機構と病原性の解明
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16K08782
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
長谷川 忠男 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (10314014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井坂 雅徳 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (40336673)
立野 一郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (50311642)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | A群レンサ球菌 / マクロライド / 薬剤耐性 / 病原因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年増加傾向のある劇症型レンサ球菌感染症における関与が大きいと考えられるemm1タイプのA群レンサ球菌に伝播したと思われるファージ領域に注目して薬剤耐性、病原性に関する解析を行った。これまでマクロライド耐性のメカニズムにはこのファージ上に存在するmef(A)の関与に比して、mef(A)の下流に存在するmsr(D)の関与が大きいことを報告してきたが、emm タイプにより関与の違いが認められた。今年度はさらに別のemmタイプの株においても解析を行ったが、emmタイプ特異的な差は認められず、プロモーター領域においても明らかな差は認められなかった。一方、mef(A)と相同性のあるmef(E)を保有する株においてもノックアウト株の樹立を行い、mef(A)保有株と同様にmef(E)の下流に存在するmsr(D)相同遺伝子の関与が大きいことを見出した。またmef(A)ノックアウト株においてエリスロマイシン存在下でmsr(D)の発現を検討したところ、野生株と誘導の差は認められず、msr(D)の発現調節においてはmef(A)の発現に依存しない発現調節機構が存在することが示唆された。次にファージ上に存在する遺伝子の病原性に関して検討を行った。注目した遺伝子はclpP遺伝子である。clpPはある種の蛋白質分解酵素であると考えられているが、他のレンサ球菌においてストレス応答に関与すると考えられているものである。現在まで3種類のemm1株においてこの遺伝子が欠損したノックアウト株の樹立に成功した。またこのclpP遺伝子はその相同性のある遺伝子がA群レンサ球菌のゲノムにも存在することが知られており、このゲノムに存在する遺伝子のノックアウト株の樹立にも成功している。またemm89タイプのA群レンサ球菌に伝播し、病原性に関与していると考えられている異なるファージを有する株においてもその特徴を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した薬剤耐性、病原性への関与が考えられるノックアウト株の樹立に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
樹立したノックアウト株を用いた解析を遂行する予定である。マクロライド耐性機構に関しては、肺炎球菌においても同様の遺伝子が存在するため、菌種による違いがあるか否かも検討予定である。病原性解析においては、in vitroにおけるストレス実験、マウス感染モデル実験を実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
薬剤感受性の解析においてreal time PCRの実施件数が想定以下であったこと、病原性解析におけるストレス応答実験における試薬がいまだ使用される段階まで来ていなかったことが主な理由と考えられている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由の項に記載した実験を施行していくとともに、今年度に計画している他の実験に使用していく予定である。
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Research Products
(1 results)