2016 Fiscal Year Research-status Report
病原真菌の鉄欠乏応答システムの解明に基づいた真菌感染症の治療戦略の創製
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16K08791
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
中山 浩伸 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (40369989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 明広 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助教 (20382228)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 鉄欠乏 / 感染症 / ストレス応答 / カンジダ / 抗真菌薬 / 遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
真菌が宿主体内でおこる鉄欠乏に適応することは、宿主体内での増殖、病原性の発現に重要となる。本研究は、病原酵母カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)を用いて、鉄欠乏ストレスの応答因子を同定し、それらの機能を宿主体内での重要性を含めて明らかにすることから、鉄欠乏応答システムの全容を解明すること、そして、そこで得られた知見をもとに抗真菌薬の標的分子の選出や化合物スクリーニングを行うことで、真菌感染症の治療戦略を創製することを目標とした。 平成28年度は、DNAマイクロアレイによる発現解析から、鉄欠乏により発現が上昇する遺伝子群の欠損株を作製し、低濃度の鉄で増殖できない株を選抜、それらの株をカイコに感染させ、病原性低下の有無を確認した(Med Mycol J. 2016 57: J163-70、2017 58:E79-86)。また、鉄欠乏時におこるミトコンドリア分解で重要な役割をするATG32についての機能解析を行い、低濃度の鉄で増殖できず、ATG32が真菌の感染成立に寄与していることを明らかにした(Autophagy 2016 12:1259-71、第 60 回日本医真菌学会総会、第90回日本細菌学会総会) さらに、鉄の貯蔵庫である小胞体でのpH調節を鉄代謝の観点から解明するための1つの糸口として、小胞体プロトンATPase(VPH2)の機能解析を行った(FEMS Yeast Res. 2016 16: pii: fow054)。 この他、他の真菌との共通性を考察するために、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus) を用いて、真菌の鉄欠乏状態を起こす血清存在下の生育において必須となる遺伝子を検索、いくつかの候補遺伝子を選出した(第 60 回日本医真菌学会総会)。 これらの結果は、真菌の鉄欠乏ストレスの応答機構の解明に大きく貢献する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、1)鉄欠乏応答因子の同定と機能解析、2)鉄欠乏時におこるマイトファジーで重要な役割をするATG32の機能解析、3)同定因子の宿主体内における重要性の検証を計画した。 鉄欠乏応答因子として、鉄取り込みに関わる因子を同定し(おおよそ10遺伝子)、カイコ感染モデルを用いて、その因子の宿主体内における重要性の検証を行った。同定した因子の中には、他の菌種でも報告がないプロテインキナーゼが含まれていた。現在、欠損株のミトコンドリア活性の測定やバキュオロのATPase活性の測定を進めている。また、ATG32の機能解析については、atg32欠損株では低濃度の鉄で増殖できず、鉄補充のためにATG32を介したミトコンドリア分解(マイトファジー)が起こることが示唆された、それを確認するため、鉄欠乏時のATG32の経時的な発現変化を調べる実験に着手している。 このように、計画した項目について実験を実施しているものの、同定因子の欠損株のミトコンドリア活性の測定やバキュオロのATPase活性の測定が十分に実施できていないこと、鉄欠乏時のATG32の経時的な発現変化の解析が完了していないことがあるため、今後、これら完了していない項目について優先的に進めていく予定である。 以上をまとめ、本研究課題全般として、やや遅れていると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度に実験が完了していない、同定因子の欠損株のミトコンドリア活性やバキュオロのATPase活性の測定を続けるとともに、強制発現株を用いたDNAマイクロアレイによる発現解析を下記1)のように継続する。また、同定因子の細胞内局在を2)のように調べる。さらには、細胞レベルでのスクリーニング系の確立について3)のように進め、鉄欠乏応答システムの全容の解明と抗真菌活性を有する化合物の選出につなげる。 1)鉄代謝調節に関わっていると考えている転写因子UPC2AのTet-OFF株を用い、UPC2Aの発現がONおよびOFFの時のRNAを調整し、DNAマイクロアレイ解析を行う。そして、マイクロアレイ解析データ(鉄欠乏ストレスによって発現変動した遺伝子群)と比較し、UPC2A支配下の遺伝子群の中からの鉄の代謝調節のシグナル伝達機構に関わる因子とUPC2Aより上流の因子の同定を試みる。さらに、必要に応じて同定因子の機能解析を28年度方法に準じて行う。また、新たに同定した因子の病原性への関与の有無もカイコおよびマウスモデルを用いて検討し、感染成立を防ぐための標的分子の提案を試みる。 2)該当因子に3x HAおよび3x Mycを導入した株を作製する。次に上記の発現解析の結果をもとに各因子の発現時期まで培養し、超遠心により分画後、抗HA抗体および抗Myc抗体を用いたウエスタン解析で、細胞局在を調べる。 3)本研究で同定した遺伝子のプロモーター領域(上流1,000bp)にレポーター遺伝子(ルシフェレース)をつないだコンストラクトを導入した株を作製し、これらの株のレポーター活性と培地中の鉄濃度との関連を調べ、低鉄濃度の時にレポーター活性が高い株を選抜する。そして、選抜された株を用い、低鉄濃度培地で化合物ライブラリーをスクリーニングし、レポーター活性のなくなる化合物を探索する。
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Causes of Carryover |
欠損株のミトコンドリア活性やバキュオロのATPase活性の測定、および、経時的な遺伝子の発現解析やマイクロアレイに使用するRNAの調整が年度内に終了せず、購入予定の試薬の一部(RNA調整試薬)を購入しなかった。そのため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し分は、物品費(RNAの調整試薬の購入)として使用する。また、次年度の物品費として、変異株等の作製時に行う遺伝子操作実験や鉄欠乏に応答するシグナル伝達経路に関わる因子の選定のために行うDNAマイクロアレイ解析、細胞内局在を調べる生化学的解析などに必要な試薬類および消耗品を購入する。また、感染実験に使用するカイコ(600 匹)、マウス(Balb/c:100頭)も物品費として購入する計画である。これらを合わせての使用額を900,000円と計画した。また、国内外の学会発表、研究会や研究打ち合わせに必要な旅費、宿泊費、日当を“国内旅費”として300,000円を使用する計画である。その他、論文を投稿するための研究成果投稿料と論文別冊作製に必要な経費として200,000円を使用する計画である。
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[Journal Article] Roles of vacuolar H+-ATPase in the oxidative stress response of Candida glabrata.2016
Author(s)
Nishikawa H, Miyazaki T, Nakayama H, Minematsu A, Yamauchi S, Yamashita K, Takazono T, Shimamura S, Nakamura S, Izumikawa K, Yanagihara K, Kohno S, Mukae H.
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Journal Title
FEMS Yeast Res.
Volume: 16
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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