2016 Fiscal Year Research-status Report
E型ウエルシュ菌イオタ毒素の細胞障害機構の解析と治療薬の開発
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16K08793
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
小林 敬子 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (90170315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永浜 政博 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (40164462)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イオタ毒素 / 二成分毒素 / 細胞障害作用 / ADPリボシル化 / エンドサイトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
腸性中毒症の原因であるE型ウエルシュ菌のイオタ毒素の細胞障害作用のメカニズムを検討してきた。本研究では、本毒素の細胞レベルでの検討を行った。イオタ毒素はIaとIbからなる二成分毒素で、Iaは酵素活性に関与し、Ibは細胞への結合に関与する。Ibが細胞膜のレセプターに結合後、オリゴマーを形成し、これにIaが結合して細胞内に侵入する。Ibの受容体として、Lipolysis-stimulated lipoprotein receptor(LSR)が報告されている。LSRは、N末側(270残基)が細胞膜に露出した膜一回貫通型の受容体である。そこで、IbがLSRのN末側のいずれの領域に結合するかを明らかにするため、LSRのN末側を削除した変異体を、LSRを発現していない細胞で発現させ、Ibの結合を観察した。その結果、Ibは、LSRのN末側25残基と結合することが判明した。さらに、siRNAでLSRをノックダウンした細胞では、Ibの結合作用が認められなかった。次に、イオタ毒素のエンドサイトーシスの初期を明らかにするため、エンドサイトーシスの初期に関与する酵素であるスフィンゴミエリナーゼ(ASMase)の役割を検討した。その結果、ASMase阻害剤やASMaseのノックダウンで、毒素の作用が抑制された。以上よりイオタ毒素は、LSRのN末側25残基に結合し、エンドサイトーシス時にASMaseを活性化して侵入することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、イオタ毒素のレセプターとの相互作用やエンドサイトーシス時にASMaseが活性化して作用することが明らかとなった。これまで、本毒素でLSRの詳細な相互作用を行った報告はなく、さらに、本毒素の侵入にASMaseが関与する報告もない。すなわち、本年度の結果は、新規な知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の検討は以下の方法で行う予定である。 1)イオタ毒素の細胞障害作用の機構を詳細に検討する。 2)イオタ毒素の腸管毒性を調べるため、腸管上皮バリアに対する作用を検討する。 3)イオタ毒素のLSR結合後の局在の変化を細胞レベルで検討する。
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Causes of Carryover |
使用器具、細胞培養、試薬等が、予定より安価で済んだ。さらに、予定していた旅費が、予想より下回り、次年度に使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、イオタ毒素の作用を、動物や細胞生物学的な方法で検討を行う。ついては、多くの試薬や培地、動物飼育などの費用が必要である。さらに、成果発表のための学会出張費にも使用する。
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