2016 Fiscal Year Research-status Report
ウエルシュ菌β毒素のP2X7受容体を介した病原性発現機構の解析
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16K08794
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
永浜 政博 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (40164462)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ウエルシュ菌β毒素 / P2X7受容体 / 細胞毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
壊疽性腸炎の原因であるC型ウエルシュ菌β毒素の病原性発現機構の解明を行う。我々は、β毒素の受容体がP2X7受容体であることを報告した。本研究では、β毒素のP2X7受容体を介する病原性発現機構の分子メカニズムを解明する。本年度は、β毒素は、細胞のP2X7受容体に作用して、どのような分子を介して免疫系細胞に障害を与えるのかを検討した。 細胞毒性メカニズムの1つとして、本毒素がカスパーゼ1を活性化することを明らかにした。さらに、本毒素の作用は、カスパーゼ1阻害剤で抑制された。すなわち、本毒素が、インフラマゾーム経路を活性化して、細胞障害や炎症を誘導する可能性を明らかにした。今後、本毒素の作用とインフラマゾーム経路の関連を詳細に検討する。次に、β毒素のin vivoでの作用を解明するため、β毒素によるマウス腸管の病理組織の評価した。毒素をマウス回腸ループに投与して、腸管上皮の病理組織学的変化を調べると、腸管上皮に脱落や出血が、投与量に依存して認められた。更に、免疫蛍光法で本毒素の腸管上皮細胞への結合とP2X7受容体の局在を観察すると、両者の腸管上皮表面での共局在が認められた。 本年度は、β毒素はin vitroでインフラマゾーム経路を活性化して細胞死を誘導すること、in vivoで回腸で病理学的変化を示すことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ウエルシュ菌β毒素の細胞毒性のメカニズムの検討と腸管に対する障害作用の解明が目的であった。 1)β毒素の細胞毒性のメカニズム:本毒素を細胞に作用させると細胞膜で形成されたオリゴマーのポアにより、水分の流出入による細胞の膨化が知られいた。これまで、毒性にどのようなシグナル経路が活性化されるか明らかにされていなかったが、今回の検討で、インフラマソームの経路が関与することが明らかとなり、今後の作用機構解明の糸口になる可能性がある。 2) β毒素の腸管に対する障害作用:本毒素の腸管に対する障害作用の検討はほとんど行われていない。今回、β毒素を腸管に投与すると、用量依存的に腸管の障害作用を示した。さらの、腸管上皮細胞では本毒素の受容体であるP2X7受容体と本毒素の共局在が認められた。すなわち、本毒素の腸管に対する障害作用とターゲット分子が明らかとなり、今後の感染症解明の理解に大きな貢献があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ウエルシュ菌β毒素の作用をさらに、詳細に検討する。 1)β毒素の細胞毒性誘導機構:β毒素の細胞毒性メカニズムとしてラフトでのポア形成が考えられる。そこで、K+等のイオンの流失入、細胞のSwelling、ラフト阻害剤の細胞障害に対する効果を検討して、本毒素のポアによる障害を明らかにする。さらに、P2X7受容体はATPの細胞外放出に関与するPannexin1チャンネル(Pan1)とリンクし、予備実験で、本毒素の細胞毒性はPan1阻害剤で抑制されることを突き止めた。そこで、P2X7 -Pan1の経路を明らかにするため、β毒素による細胞外へのATP遊離、P2X7受容体の3量体チャンネル形成、ATPaseの本毒素に対する効果、Pan1のノックダウンなどを検討して、細胞死を検討する。 2)β毒素による腸管上皮バリア機能に対する効果:β毒素の腸管障害作用が明らかとなった。腸管上皮細胞のタイトジャンクション(TJ)分子であるocculdinやclaudinの変化を観察する。腸管モデルとして Caco-2細胞を用いて、β毒素による上皮バリア機能の変化を膜電気抵抗値(TER)から測定し、P2X7受容体阻害剤の効果、さらに、前述のTJ分子やアクチンフィラメントの変化を観察する。以上より、本毒素による腸管に対する作用を組織学的変化からタンパク質レベルまで検討し、毒性発現の機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
試薬や器具などの消耗品が予定していた金額より安価に済んだこと、さらに、予想していた旅費が予想より下回った。以上の理由により、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
β毒素の作用機構を詳細に検討するため、細胞生物学的な手法や動物実験、試薬や器具などの多くの消耗品を使用する。また、成果発表のため、学会で出張費を使用する。
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Research Products
(17 results)