2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K08795
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
池辺 忠義 国立感染症研究所, 細菌第一部, 主任研究官 (20333362)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 病原性 / 劇症型溶血性レンサ球菌感染症 / B群レンサ球菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)は、患者の約30-50%が死亡する極めて致死率の高い全身性感染症である。B群レンサ球菌によるSTSSは、日本において、その症例数が5年前と比較して10倍以上に増加している。しかしながら、STSSを引き起こすB群レンサ球菌について世界を含めてほとんど研究されていない。B群レンサ球菌によるSTSSにおいて、菌がどのように変化したか調べることを目的とする。 8株中少なくとも5株のSTSS株で、特定のタンパク質の分泌がみられたが、膣由来株6株調べたところこのタンパク質の分泌はみられなかった。このことから、STSS株と膣分離株との間に遺伝的差異があると考えた。その違いを見出すため、STSS株の中から目的の分泌タンパクが見られた2株を選び、ゲノムDNAを抽出した。同時に比較するコントロールとして、膣由来株中から1株を選び、ゲノムDNAを抽出した。これらのゲノムDNAを用い、一塩基多型解析(SNPs解析)を行った。STSS株2株で変異が見られ、膣由来株で変異が見られない遺伝子を抽出し、原因遺伝子の候補とした。 STSS株で変異のあった遺伝子が、目的のタンパク質の分泌に影響を与えているか調べるため、STSS株に膣由来株のintactの遺伝子を持つプラスミドを導入した。導入した株を培養し、分泌タンパク質を抽出した。これをSDS-PAGEで分離し、STSS株でみられた分泌の上昇のあったタンパク質の量を確認した結果、病原遺伝子の発現が膣由来株と同じレベルになったものが1つ存在した。 選択した遺伝子の変異株を作製した。膣由来株がもつ目的遺伝子の破壊株を作製し、分泌タンパク質を抽出した。これをSDS-PAGEで分離し、STSS株でみられた目的の分泌タンパク質の増加があるか確認した結果、目的のタンパク質の増加が見られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書で記載した事項のことが行われており、結果も当初の予定通り出ているから。
|
Strategy for Future Research Activity |
同定した原因遺伝子について、STSS株においてどれくらいの頻度で変異がみられるか調べるため、STSSを引き起こした様々な血清型のB群レンサ球菌50株について原因遺伝子の塩基配列を決定する。塩基配列を決定したのち、アミノ酸配列に翻訳して変異領域のマップを作製する。 原因遺伝子の変異によりin vivoで病原性に影響を与えるか調べるため、マウスをもちいた動物実験を行う。 発現の上昇がみられたタンパク質について、SDS-PAGEにより得られたゲル断片からタンパク質を同定する。 ゲノムワイドな遺伝子発現制御解析に加え、新規の病原性遺伝子を検索するため、STSS株、膣由来株、膣由来株の原因遺伝子を変異させた株からRNAを抽出し、マイクロアレイあるいはRNA-seqを行う。 病原性に関与する遺伝子を検索するため、原因遺伝子に変異のみられるSTSS株で発現の上昇がみられ、ホモロジーサーチやモチーフ検索で膜タンパク質あるいは分泌タンパク質をコードしていると推測される遺伝子を選択する。膜タンパク質、あるいは、分泌タンパク質と推測された機能未知のものについて、遺伝子破壊株を作製する。作製した破壊株を用いて、マウスを用いた動物実験を行い、病原性に関与するものを検索する。
|
Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成28年度分についてはほぼ使用済みである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のとおり。
|
-
[Journal Article] Spontaneous mutations in Streptococcus pyogenes isolates from streptococcal toxic shock syndrome patients play roles in virulence.2016
Author(s)
1.Ikebe T, Matsumura T, Nihonmatsu H, Ohya H, Okuno R, Mitsui C, Kawahara R, Kameyama M, Sasaki M, Shimada N, Ato M, Ohnishi M.
-
Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 28761
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-