2018 Fiscal Year Research-status Report
肺炎球菌の病原因子・宿主応答に関する分子基盤と次世代肺炎球菌ワクチン開発への展開
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16K08800
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
小川 道永 国立感染症研究所, 細菌第一部, 室長 (80361624)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肺炎球菌 / オートファジー / FIP200 / 病原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では肺炎球菌感染症の新規治療法開発を目指し、肺炎球菌の病原因子と宿主因子との相互作用、特に感染2時間後に誘導されるオートファジー誘導に焦点を当てて解析を行い、その誘導メカニズムの一端を昨年度までに明らかにしている。 本年度は、FIP200非依存的に誘導されるノンカノニカルオートファジーであるLAP(LC3-associated phagocytosis)に焦点をあてて解析を行った。LAPはマクロファージにビーズや酵母の細胞壁の粗抽出物であるザイモザンを取り込ませたときにROS(Reactive oxygen species)依存的に誘導されることが最新の研究から知られている。本研究ではFIP200ノックアウトマウス由来のMEF細胞を用いて、ノンカノニカルオートファジー誘導機構について、オートファジー、および他のノンカノニカルオートファジーとの比較解析を行った。その結果、肺炎球菌感染1時間後に一過性にFIP200非依存的なLAP様構造(PcLAP:pneumococci-containing LAP)が誘導されることが明らかになった。そこで、貪食細胞におけるLAP誘導に必要であることが報告されているPI3P、NADPH oxidase由来のROS、およびTLR2がPcLAP誘導に必要であるかどうかを調べた。その結果、いずれもPcLAP誘導には必要ないことが明らかになり、LAPとPcLAPの誘導メカニズムは異なることが明らかになった。次に、PcLAPもPcAVも誘導されないAtg5 KO細胞と、PcLAPは誘導されるがPcAVは誘導されないFIP200 KO細胞における肺炎球菌の細胞内生残性を比較した。その結果、両者で有意な差は認められなかった。この結果から、PcLAPは肺炎球菌に対しては殺菌的な作用は示さないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞内に侵入した肺炎球菌に対するLAP様構造認識機構に焦点を当て、カノニカルなオートファジー、貪食細胞におけるLAPとの比較解析を行った結果、PcLAP誘導にはAtg14L、PI3P、ROS、およびTLR2は不要であることを明らかにした。PcLAPは肺炎球菌に対しては殺菌的な作用は示さないことが明らかになったことから、感染におけるその意義について解析を行い、それらの結果を海外の学術誌に現在準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題から、肺炎球菌感染1時間以内の「感染初期」と感染2時間以降の「感染後期」では細胞内に侵入した肺炎球菌に対する認識機構が異なることが明らかになった。今後はこれら2つのオートファジーの連続性について解析を行うとともに、それぞれの膜に局在する宿主因子の動的な挙動や、肺炎球菌の保有する病原因子によるその制御機構について研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
予想以上に早く成果が出たため、本研究課題の論文を投稿中であり、受理までの時間、投稿にかかる費用が未確定のため 補助事業期間延長を申請致しました。
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Research Products
(7 results)