2019 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on immunopathogenesis of hantavirus infection
Project/Area Number |
16K08801
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
清水 健太 北海道大学, 医学研究院, 助教 (20466840)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞傷害性T細胞 / CD8陽性T細胞 / 腎症候性出血熱 / ハンタウイルス / マウスモデル / 免疫病原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルス性出血熱の一つである腎症候性出血熱は、ハンタウイルス感染によって起こる重篤な疾患である。これまでに研究代表者は腎症候性出血熱のマウスモデルを開発し、その病態発現にCD8陽性T細胞が関与することを明らかにした。しかし、病態発現に至るメカニズムは明らかではない。そこで本研究では、病原性の異なる強毒および弱毒株を用いて、病原性に違いが生じるメカニズムの解明を試みた。感染マウスの腎臓中のCD8陽性T細胞およびハンタウイルスに特異的な細胞傷害性T細胞 (CTL) の数は非感染マウスよりも顕著に増加したものの、強毒および弱毒株間で差は認められなかった。一方で、CTLによる攻撃に重要な遺伝子 (IFN-γ、PerforinおよびGranzyme)、CTLを引きつけるケモカイン (CXCL9およびCXCL11)、活性化によって誘導されるT細胞の細胞死に関わる遺伝子などの発現量が強毒株感染マウスの方が高いことが明らかとなった。腎臓中のウイルス量は、接種3、6、9および12日後のいずれの時点でも強毒株の方が多く、排除のスピードも遅いことが明らかとなった。これらのことから、強毒株感染マウスでは、CTLの活性化とともに、一部のCTLの機能抑制や細胞死が起こるが、新しいCTLが補充され、全体としてはCTLの活性が高い状態になっていると考えられる。そして、強毒株感染マウスではCTLの攻撃対象となるウイルス抗原の量が多く、また排除が遅いためにCTLによる攻撃が強く長く続き腎出血が起きていると考えられる。期間延長した最終年度には、T細胞の機能を抑制する作用があり、移植後の拒絶反応の抑制や自己免疫性疾患の治療などに使用されているCyclosporin Aの治療効果の有無を調べた。しかし、その効果は認められなかった。T細胞の機能の抑制により、ウイルス量は増加する。今後、ウイルス増殖を抑制する薬剤を併用するなどして、T細胞の機能とウイルス量のバランスを考慮して検討する必要があると考えられる。
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