2016 Fiscal Year Research-status Report
エボラウイルスの初期標的細胞と病原性発現メカニズムの解明
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16K08802
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
津田 祥美 北海道大学, 医学研究科, 助教 (70447051)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ウイルス / 病原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
エボラウイルスの主要標的細胞はマクロファージや樹状細胞であると言われているが、エボラウイルスが感染した宿主体内で実際に初めにマクロファージや樹状細胞で増殖しているのか、また致死的病態にどのように関与しているのかは未だ不明である。本研究ではエボラウイルス病の病原性発現メカニズムを明らかにするために、エボラウイルスの初期標的細胞を同定し、感染により誘導される病態形成に重要な宿主応答を解明することを目的とした。本年度はレポーター遺伝子を組込んだウイルス様粒子(trVLPシステム)の構築を試みた。本システムはリポーター遺伝子を組み込んだウイルス様粒子で、複製に必要なウイルス遺伝子を持たないため日本国内のBSL2実験室で安全に使用することが可能である。日本国内で組換え許可を得ているtrVLPシステムを構築するとともに、年度途中より同時に進行中である課題により渡米する機会を得たため、テトラシストロニックtrVLPシステムとの比較を行った。テトラシストロニックtrVLPシステムはtrVLPシステムに加えて、遺伝子プラスミドにリポーター遺伝子とともにエボラウイルスの構造蛋白質の遺伝子の一部を持つことによりリポーター遺伝子のみの場合よりも効率よくtrVLPを作出できる。また作出したtrVLPを細胞に接種することで一過性にリポーターの発現を検出できることを確認できた。本年はまた検出システム構築のためエボラウイルスタンパク質に対するペプチド抗体を作出し、より多角的に感染細胞からウイルスが検出できるよう準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、初年度は日本国内で感染初期におけるエボラウイルスを検出するシステムを構築する予定であったが、渡米により日本国内におけるシステム構築は若干予定より送れることとなった。一方で、既にシステムを使用している施設であることから、システム構築後に比較予定であった検出方法の比較検討を先に行うことができた。また同時に検討予定であった組換え水疱性口炎ウイルスの作成については十分な検討ができなかったため、次年度以降連携研究者の吉田博士の協力のもと検討を進める予定である。このように本年度は若干予定より進捗状況は遅れることとなったが比較検討したシステムを日本国内での解析に導入することで、翌年度以降より効率よく課題が進むものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、比較検討したtrVLPシステムおよび組換え水疱性口炎ウイルスベクターを用いてウイルス感染細胞の同定と初期免疫応答を解析していく。作出したtrVLPもしくは組換え水疱性口炎ウイルスを培養細胞に接種してリポーターの検出を試みる。レポータータンパク質の検出系の確認とともに、qRT-PCRやin situ PCR法などの接種した細胞からのレポーターやウイルス遺伝子の検出法を検討する。培養細胞での結果をもとに作出したtrVLPおよび組換えウイルスをマウスやハムスターなどの実験動物に接種し、ウイルス感染細胞を同定する。同時に接種時の局所における免疫系細胞の参集とサイトカイン産生などを解析する予定である。マウスやハムスターにtrVLPもしくは組換えウイルスを異なる接種経路により接種し、各々感染1~2日後の感染細胞の検出を試みる。感染後、経時的にサンプリングを行い、MACS磁気細胞分離、免疫染色やフローサイトメーターを用いて感染細胞の同定を試みる。またレポータータンパク質もしくはウイルス遺伝子の検出可能時期を検討する。さらに接種局所における免疫系細胞の参集や宿主応答の有無を解析することでエボラ出血熱の病原性に重要と考えられる宿主免疫応答や他の宿主応答について同定する予定である。
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Causes of Carryover |
標的細胞を検出システムの構築に時間を費やしたことから当初の計画よりも試薬の購入が少なかった。また国内旅費も予定との差額が生じたことから次年度へ繰り越して使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降は、作出したシステムを用いて実際に細胞および動物からのウイルスおよびレポーターの検出を計画していることから細胞培養試薬および検出試薬の購入を計画している。
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Research Products
(1 results)