2017 Fiscal Year Research-status Report
高速原子間力顕微鏡を用いたウイルス転写複合体の微細構造解析
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16K08808
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中野 雅博 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (90456997)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 転写 / 複製 / 原子間力顕微鏡 / RNAウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスのvRNPは、マイナス鎖一本鎖ゲノムRNA、核タンパク質NP、RNAポリメラーゼ複合体から構成されており、mRNA合成(転写)およびcRNA合成(複製の第一段階)を担う。ウイルス粒子から精製したvRNPは二重らせん構造を形成しているが、mRNAあるいはcRNA合成中のvRNPの構造については全く解明されていない。さらに、これらのRNAがどのようにして合成されるのかも分かっていない。そこで本研究課題では、高速原子間力顕微鏡(AFM)を用いてRNA合成中のvRNPを解析することによって、微細構造学的観点からインフルエンザウイルスゲノムの転写・複製機構を明らかにすることを目的とした。 昨年度までに、in vitro RNA合成中のvRNP複合体は、①二重らせん構造を維持した状態で二次構造を形成したRNAと結合、あるいは、②二重らせん構造が崩れた状態で二次構造を取らないループ状RNAと結合、のいずれかの状態で存在することを高速AFMにより明らかにした。さらに興味深いことに、ループ状RNAは二本鎖RNAであることを明らかにした。本年度は、酵素学的手法を用いてループ状RNAの5'末端について解析し、その5'末端がリン酸化されていることが明らかとした。すなわちループ状RNAは、de novo合成されるcRNAを含んでいる可能性が高い。さらにこの二本鎖ループ状RNAは、インフルエンザウイルスNS1タンパク質によってマスクされることを高速AFM観察により明らかとした。これらの結果は、インフルエンザウイルスは複製(cRNA合成)中に二本鎖を形成する可能性があるが、この二本鎖RNAが宿主の自然免疫を引き起こさないようにNS1でマスクするというメカニズムを備えていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
複製の際にインフルエンザウイルスが二本鎖RNAを作りえるということだけでも興味深い発見であったが、それに加えてその二本鎖RNAがウイルスタンパク質NS1によってマスクされることを見いだした。このことはインフルエンザウイルスが自然免疫を逃れるメカニズムについて新たな知見を与え、さらなる研究の発展につながると考え当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は当初の想定にはなかった二本鎖RNAのマスキングに研究の重点を置いたため、脂質膜上でのvRNPのRNA合成のライブイメージングに時間を割けなかった。最終年度は当初の予定通りライブイメージングを行い、インフルエンザウイルスの転写および複製についてさらなる知見を得たいと考えている。
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Causes of Carryover |
理由としては、当初の想定よりも研究が順調に進み、経費の削減を行うことができたためと考えている。 ライブイメージングに必要なカンチレバーや脂質等の試薬の購入に使用したいと計画している。
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