2016 Fiscal Year Research-status Report
インターフェロン反応によって確立される抗デングウイルス状態の分子基盤の解析
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16K08820
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
鈴木 陽一 大阪医科大学, 医学部, 講師 (40432330)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | デングウイルス / インターフェロン誘導性因子 / 細胞性因子 / 抗ウイルス分子 / cDNAライブラリースクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
インターフェロン反応によって誘導されるデングウイルスに対する抗ウイルス状態の分子基盤を明らかにするために、I 型インターフェロンを処理したヒト細胞の mRNA から作製した cDNA ライブラリーを導入した Huh7.5 細胞より、デングウイルス感染に抵抗性を示す細胞クローンを約50株得た。そしてそれらの細胞に導入されている cDNA をシークエンシング解析したところ、23 種類の異なる遺伝子が同定された。細胞クローンの中で 43% は抗デングウイルス遺伝子としてすでに報告している RyDEN/C19orf66 (Suzuki et al. [2016] PLoS Pathog)、 そして 23% の細胞にはリボソーム関連タンパクの遺伝子が導入されていた。一方、それ以外のタンパクをコードする ORF 配列 (13%) やノンコーディング RNA (2%) 遺伝子も挿入されていることが明らかとなった。そこで、これらの遺伝子のデングウイルス阻害活性を調べるために、各遺伝子を発現プラスミド DNA にクローニングした。本研究では候補遺伝子として (1) C19orf53、(2) mRNA turnover protein 4 homologue (MRTO4)、(3) LINC00052 (ノンコーディング RNA)、(4) Interferon-alpha inducible protein 27 (IFI27)、(4) DNAJC14 (N 末端欠損型)、および (5) RNA-binding motif protein 28 (RBM28) を選択し、それぞれの発現プラスミドトランスフェクションしたヒト細胞におけるデングウイルスの複製効果を検討した。その結果、IFI27 ならびに DNAJC14 発現細胞においてウイルス複製に対する抑制効果がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成 28 年度の当初のスケジュールにおいては候補遺伝子コードするレンチウイルスベクターを作製し、それを用いて各因子の恒常性発現細胞を樹立する予定であったが、幾つかの候補遺伝子について安定な発現細胞を樹立することができなかった。特にインターフェロンでその発現が制御されると考えられる遺伝子についてその傾向がみられた。したがって、恒常性発現系ではなくトランスフェクションによる一過性発現系に手法を変更したため、各候補遺伝子の抗デングウイルス活性を検証するという初期段階の予定が大幅に遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
一過性発現実験によってデングウイルス複製に対する抑制効果が確認された細胞性因子 (IFI27、DNAJC14) について、その分子メカニズムを解析する。平成 28 年度におこなった強制発現実験の結果を確認するため、各遺伝子の RNA 干渉法によるノックダウン実験、さらには CRISPR-Cas9 システムによるノックアウト実験をおこない、ウイルスの複製効率を検討する。次に、細胞内の分子の局在を蛍光抗体染色法や免疫電子顕微鏡法で解析することにより、各因子のウイルス感染やインターフェロン処理による動態の変化、ならびにウイルス側標的分子の決定をおこなう。デングウイルス側の標的分子については免疫沈降法を用いても検討し、その情報をもとに各因子の発現によって影響を受けるウイルスの複製過程を調べる。本研究で同定された DNAJC14 は完全長ではなく、N 末端側の 304 アミノ酸が欠損した変異体が候補遺伝子として分離されたが、平成 29 年度には完全長の DNAJC14 も解析の対象とする。一方、デングウイルスはそのウイルスタンパクを介してヒトのインターフェロンシステムに干渉し、結果的にウイルス増殖に有利な状況を作り出すことが知られている。しかし、この干渉現象はマウス細胞ではみられない。そこで、インターフェロン処理したマウス細胞の mRNA から作製した cDNA ライブラリー用い、同様のスクリーニング実験をおこなうことによって、マウス遺伝子由来の新規抗デングウイルス因子の同定を試みる。そして、同定されたマウス抗ウイルス因子をヒトのそれと比較することによって、なぜヒト細胞では容易にデングウイルス感染が成立するのかといった疑問に対する重要な考察が得られるものと考えられる。
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Causes of Carryover |
平成 28 年度においては研究の若干の遅れがあり、当初実施すべきであった実験の幾つかは平成 29 年度に繰り越しておこなうこととなった。そのため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の研究計画ですでに予定している平成 29 年度の実施内容に加え、平成 28 年度に実施できなかった研究をおこなうための物品費として主に使用する。
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Research Products
(6 results)