2016 Fiscal Year Research-status Report
APOBEC3によるGag-Pol前駆体プロセシング阻害の機序解明
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16K08821
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
博多 義之 近畿大学, 医学部, 講師 (30344500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮澤 正顯 近畿大学, 医学部, 教授 (60167757)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | HIV-1 / APOBEC3 / Gag-Pol autoprocessing |
Outline of Annual Research Achievements |
MuLVの成熟Protease (PR)、Gag-Pol前駆体、およびGag-Pol processing中の中間体を検出可能な自作の抗体とGag-Polを産生するin vitro転写翻訳系を利用したアッセイにより、約130kDaの分子量をもつ中間体が成熟PRおよびGag-Pol前駆体とともに検出されている。平成28年度、当該中間体の産生がmAPOBEC3量依存的に減少すること、その減少にはmAPOBEC3の全長が必要であり、1つのデアミナーゼドメインを含むN末側半分のmAPOBEC3では減少が認められないことが分かった。また、N末側半分あるいはC末側半分に短縮したmAPOBEC3はウイルス粒子内の成熟PRの産生を減少しなかった。さらに、mAPOBEC3による成熟PR産生阻害は、最終的に未成熟ウイルス粒子の増大につながることが電子顕微鏡観察で明らかとなった。次に、mAPOBEC3がGag-Pol中どこに結合するのか調べた。コムギ胚芽系を利用しGST-mAPOBEC3を、in vitro転写翻訳系でウイルスタンパク質を調整した。両者を混合し、pull down assayを行った結果、mAPOBEC3はPRと結合していた。以上の成果は現在論文作成中である。 mAPOBEC3はHIVの成熟PRの産生を阻害していることが我々の初期の解析から分かっていた。本年度、HIV粒子中のmAPOBEC3を免疫沈降し共沈するウイルスタンパク質を検出したところ、mAPOBEC3はIN領域で強く結合していた。また、ヒトのAPOBEC3もHIV成熟PRの産生を阻害していることが判明した。APOBEC3の種を超えた機能の保存性が示唆される重要な知見である。また、HIVのIN産生はmAPOBEC3による阻害を受けておらず、mAPOBEC3の効果はIN産生以降に発揮されると示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Gag-Pol前駆体においてmAPOBEC3が結合する領域の同定やMuLVの成熟PRの産生をmAPOBEC3が阻害する分子機構の解明について、研究計画に則った成果が着実に出ている。また、MuLVの成熟PRの産生を阻害するmAPOBEC3の活性は最終的にウイルス粒子の成熟にまで影響することを明らかにすることで、mAPOBEC3が持つ多面的な抗ウイルス活性に対する理解が格段に深まっている。一方、分子量130kDaの中間体はNC-Pol(MuLVのNC領域とPol領域からなる)であると予想しており、その実体を確認するためにGag-Pol前駆体のCA/NC切断部位にPR抵抗性の変異アミノ酸を導入する方法などの実験を組んだが、今のところ確証を得るに至ってはいない。しかし、その上流産物との量比からも当該中間体はNC-Polであることを示唆するデータが新たに得られている。また、平成28年度、mAPOBEC3はPRと結合することが判明したため、結合のための最小領域を同定中であり、現時点では50-60残基長程度まで範囲を狭められている。また、両者が結合するという事実からmAPOBEC3はPR活性を直接制御している可能性が考えられた。そこで、mAPOBEC3存在下のPR活性をを評価する実験系の確立を現在試行している。PRで切断される既知配列としてmAPOBEC3のエキソン5産物が報告されている。そこで当該エキソン5に由来するペプチド配列をN末にEDANSおよびC末にDABCYLを標識したFRETペプチドとして合成・精製し、PRの活性評価に使用できるか検討している。また、平成29年度以降に予定していたHIVの解析を前倒しで行うことができ、着実に成果が出ている。以上の通りほぼ予定通り、一部は予定した以上に成果が出ており、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
mAPOBEC3存在下のMuLV PR活性評価のためにmAPOBEC3のエキソン5に由来するペプチド配列をFRETペプチドとして現在利用しているが、PRの活性評価に十分な感度が得られるのかは現時点では分かっておらず、PRによる標的配列を別の配列(Gag中の標的配列)に変えたFRETペプチドも順次準備していくことで、より迅速にPRの活性評価を行う体制を整え、PR活性にmAPOBEC3が与える影響について解析していく。 AKVはFriend MuLVとは異なり、mAPOBEC3によるGag-Pol切断阻害を受けてない可能性が高い。そうであればAKVとFriend MuLVの配列を比較し、異なるアミノ酸残基を相互に入れ替えた変異Gag-Pol前駆体のプロセシング阻害状態を調べることで、阻害に関わる領域がPR領域であると確認できると考えられる。そこでまず研究実施計画の通り、AKVのGag-PolについてmAPOBEC3によるプロセシング阻害の有無を追試する。 mAPOBEC3が結合するHIV-1のIN領域の内、最小領域を決定する。INの産生をmAPOBEC3は殆ど阻害していないという結果を得ているため、IN領域での結合はIN自身の切り出しを阻害しているというよりも、別のPR標的箇所の切断効率に作用していると思われる。 HIV-1 PRに対する抗体とGag-Polを産生するin vitro転写翻訳系を利用したアッセイにより、Gag-Pol前駆体とともに数種の中間体が検出できている。最も分子量の小さい中間体は約20kDa程度であり、mAPOBEC3存在下では顕著に消失する。当該中間体の実体を明らかにすることによっても、mAPOBEC3の成熟PR産生阻害の分子機構に迫る。 以上の通り、今後も研究実施計画に則り研究を推進していく。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Specific niches for lung-resident memory CD8+ T cells at the site of tissue regeneration enable CD69-independent maintenance2016
Author(s)
Shiki Takamura, Hideki Yagi, Yoshiyuki Hakata, Chihiro Motozono, Sean R. McMaster, Tomoko Masumoto, Makoto Fujisawa, Tomomi Chikaishi, Junko Komeda, Jun Itoh, Miki Umemura, Ami Kyusai, Michio Tomura, Toshinori Nakayama, David L. Woodland, Jacob E. Kohlmeier, and Masaaki Miyazawa
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Journal Title
J. Exp. Med.
Volume: 213
Pages: 3057-3073
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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