2017 Fiscal Year Research-status Report
APOBEC3によるGag-Pol前駆体プロセシング阻害の機序解明
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16K08821
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
博多 義之 近畿大学, 医学部, 講師 (30344500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮澤 正顯 近畿大学, 医学部, 教授 (60167757)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | HIV-1 / APOBEC3 / Gag-Pol autoprocessing / retrovirus / 感染抵抗性因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度にはこれまでの成果に定量的な解析を加えることでmAPOBEC3 (mA3)のGag-Pol autoprocessingに与える影響についてより正確なデータを追加するとともに、mAP3とウイルスプロテアーゼ(PR)の相互作用についてより詳細な解析を行った。その結果、以下のことが分かった。1)複製能を有するp57 strainおよびPR不活性型のp57 strainを使用し、これらがexon 5を含むmA3 (5+ mA3)および含まないmA3 (d5 mA3)をウイルス粒子内に取り込むことが分かった。2)また、5+ mA3はPR特異的に切断を受けていた。3)Moloney MuLV内に取り込まれた5+ mA3は殆ど切断されないことが分かった。4)Pull down法により、mA3との結合最小域としてPR内部配列が同定された。5)mA3によりGag-Polからの成熟PR産生は半減し、Gagの切断効率も同様に減少することが分かった。6)当初、成熟PRの産生阻害についてはmA3によるGag-Pol autoprocessing阻害を想定していたが、現在切断サイトの異常を含むGag-Pol autoprocessing異常をmA3が引き起こしている可能性が示唆されている。以上の成果を含めた論文を投稿中である。 HIV-1のGag-Pol前駆体からの成熟PRの産生をmA3が阻害していることが判明している。平成29年度の解析から上記に加えて、mA3によりHIV-1粒子の産生が減少していることが分かった。ウイルス複製過程の内、集合または出芽にmA3が影響している可能性が考えられる。免疫沈降法によりmA3がGag-Pol前駆体に結合することを認めた。ウイルス粒子のコアの安定性を評価したしたところ、mA3によりコアの安定性に変化は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MuLV Gag-Pol前駆体とmA3の結合、MuLV PRの中でmA3が結合する最小領域の同定が着実に進んだ。また、mA3がMuLV PRの産生を阻害する機構の解明について、当初は幾つかの切断が順序正しく連続して起こると考えられているGag-Pol autoprocessing過程の内、いずれかの素過程を阻害するものと想定していたが、現在までにGag-Pol前駆体中の本来は切断箇所でない部位の切断を含む異常な切断をmA3が引き起こしている可能性が新たに分かってきている。また、mA3存在下で減少する成熟PRタンパク質の量についてより定量的な解析を行い、その減少の程度が下流の反応である成熟PRによるGag processingの効率とよく相関することが分かった。さらに、成熟PRとmA3との相互作用の結果として、エキソン5を持つ5+ mA3はウイルス粒子内で分断されるが、同じMuLVであってもstrainの違いにより分断効率は著しく異なり、その効率はmA3によるMuLV Gag-Pol前駆体からの成熟PR産生阻害能と逆相関していた。これらの結果は、ウイルス(MuLV)と感染抵抗性因子(mA3)の共分子進化の概念を発展させるものであり、意義深い成果である。 HIV-1についてMuLVと同様の解析を行い、mA3によるHIV-1 成熟PR産生量の減少を認めた。これに加えて、HIV-1の場合は培養上清に放出されるウイルス粒子量のmA3による減少がMuLVと比べてより顕著に認められた。細胞内に発現するウイルス遺伝子産物量にmA3の影響は認められないことから、上記はウイルス複製過程の中の集合または出芽時の異常であると考えられる。現在、ウイルス粒子減少の機構を解析中である。以上の通り、予想された成果とともに予想外の成果も出ており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
mA3によるMuLV PR活性阻害を評価するためのFRETペプチドを改良する。新たなドナーとアクセプターを付加したmA3 exon5由来FRETペプチドを既に準備している。 Ecotropic MuLVについて幾つかのstrainでmA3と成熟PRの相互作用を確認したが、AKV、xenotropic、polytropic MuLVについても同様の解析を進める。これらの内、mA3によるGag-Pol前駆体からの成熟PR産生について阻害を受けてないウイルスについてFriend MuLVの配列と比較し、原因となるアミノ酸残基を同定する。後者2つを新たに解析に加えることで効率的に責任残基の同定に繋がると推測している。 HIV-1の場合、培養上清に放出されるウイルス粒子量がmA3存在下で顕著に減少することが認められた。mA3がGag-PolやGagと結合することにより、Gag-Pol間、Gag間、Gag-PolとGag間の相互作用に異常が生じること(集合過程の異常)で、結果としてウイルス粒子量の低下に繋がっていることが考えられる。開発されているFRETの系を用いてGag間やGag-Pol間、およびGag-PolとGag間の二量体化を評価し、それら相互作用におけるmA3の働きを追求する。 HIV-1 Gag-PolおよびPRについてmA3が結合する最小領域の決定をMuLVの時と同様に行う。また、mA3が成熟PR活性に及ぼす影響を調べる。この際、精製したPRとPR活性評価FRETペプチド(既に入手済み)の系にコムギ胚芽系で合成したmA3を加え(既に作成済み)、阻害活性を定量的に評価する。さらに、薬剤耐性変異を導入したGag-Polからの成熟PRの産生をmA3が阻害するのかこれまで利用しているin vitro転写・翻訳系で評価する。以上の通り、今後も研究実施計画に則り研究を推進していく。
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Research Products
(1 results)