2016 Fiscal Year Research-status Report
TNFシグナル関連分子群に着目したマクロファージの発生分化制御機構の解明
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16K08828
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
山条 秀樹 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (50391967)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / マクロファージ特異的TAK1欠損マウス / 組織常在マクロファージ / 無菌性炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
シグナル伝達分子TAK1の生理的な役割を明らかにする目的で、TNFα欠損背景下におけるマクロファージ特異的TAK1欠損マウス(以下TAK1ΔM x TNFα-/-マウス)を作成したところ、興味深い表現型を観察した。まず研究申請時において一部非リンパ組織において組織常在マクロファージの著しい低下を観察していたが、様々な組織についてフローサイトメトリーを用いて調べてみたところ、肝臓、肺のみならず腹腔、脂肪、粘膜固有層においても組織常在マクロファージの著しい低下が観察された。一方で欠損マウスの個体によっては、対照マウスと同程度の組織常在マクロファージを観察した。この差異を詳細に調べたところ、組織常在マクロファージの著しい低下が認められた全ての個体において臓器炎症を起こしていることが判明した。臓器炎症の詳細について免疫学的、病理学的、生化学的視点から解析したところ、TAK1ΔM x TNFα-/-マウスでは主に肝臓と腹腔における炎症が顕著であった。詳述すると、肝臓、腹腔共に好中球、単球といった炎症細胞の異常な浸潤が認められ、また血清中のAST、ALT、LDH及びIL-6の値が対照マウスと較べて著しく高かったことから、炎症による肝機能障害を誘発していることが考えられた。以上の結果から、マクロファージ中におけるTAK1欠損が、sterile inflammation(無菌性炎症)の発症原因となっていることが推察された。組織常在マクロファージの著しい低下について、マクロファージの発生・分化異常の可能性を探るため、単球・マクロファージの前駆細胞として同定されたcommon monocyte progenitor(cMoP)をフローサイトメトリーで調べたところ、対照マウスと比較して特に顕著な差異は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度予定していた研究実施計画を順調に遂行できたのみならず、研究成果から当初予想していなかった研究展開の拡がりを見せており、次年度に向けた研究推進とその成果が充分期待されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果から、シグナル伝達分子TAK1のマクロファージにおける作用機序と免疫恒常性維持との関連性が浮かび上がってきた。そこで次年度はTAK1によるマクロファージの制御機構について、in vitro及びin vivoでの解析を中心に据え研究活動を展開する。具体的には、まずin vitroにおける研究展開において骨髄由来培養マクロファージを用いたシグナル伝達経路について網羅的な解析を行い、作用機序の柱となりうるシグナル伝達経路の特定を目指す。次にin vivo解析においては、TAK1欠損マウスに見られる炎症病態を制御していると考えられる候補分子群に着目し、それらの欠損マウスとの交配によりTAK1 x (候補分子群)との多重欠損マウスを作成し、病態制御機構について解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、平成28年度に国際学会に参加の予定であったが、研究の進捗状況により、平成29年度に実施することとしたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、平成29年度請求額と合わせて学会参加のための出張旅費として使用する。
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