2016 Fiscal Year Research-status Report
体細胞超変異による自己反応性B細胞出現モデルの構築と末梢性B細胞自己寛容の解明
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16K08837
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
榊原 修平 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 寄附研究部門助教 (10618838)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / 免疫寛容 / 自己免疫疾患 / B細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、これまでの研究から、全身性エリテマトーデス(SLE)に認める高親和性自己反応性B細胞レパトアは、体細胞超変異(SHM)により、その反応性を増大させていることを次世代シーケンス解析などから明らかにしてきた。しかし、臨床検体の観察では、自己反応性B細胞の出現の場やその後の分化を調べることができない。本研究では、マウスにて、末梢での自己抗体レパトアの進化を再現できる実験系の構築を行い、末梢での自己反応性獲得の実態を明らかにする。さらに、臨床研究では困難であった骨髄長寿命形質細胞やメモリーB細胞分画での動態を明らかにし、B細胞における末梢性自己寛容機構の存在を示す。本研究から、SLE病態形成の理解と理論的な治療法の開発に結びつける。 モノクローナル抗体クローン121G9は、急性期SLE患者末梢血より得られた抗核抗体の一つで、dsDNAおよびssDNAいずれにも結合する。表面プラズモン解析では、dsDNAやssDNAに対し、KD = 2~4×10-9Mと強い親和性を示す。H鎖、L鎖いずれにも複数のアミノ酸置換を伴うSHMを有し、gemline配列に戻すとDNAへの結合が失われた。この121G9 germline配列(H鎖、L鎖)をマウス免疫グロブリン遺伝子座へ挿入する。交配によって、H鎖、L鎖遺伝子座について目的のBCRを持つ121G9 GL KIマウスを樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高親和性抗DNNA抗体germline配列をIg遺伝子座に持つマウス121G9 GL KIマウスを樹立した。これらのマウスで、成熟B細胞が作られることを確認した。 貪食能欠陥自己免疫マウス(MFG-E8ノックアウトマウス)MFG-E8(milk fat globule-EGF factor protein 8)は、二次リンパ組織内の瀘細樹状細胞(FDC) より産生され、アポトーシス細胞の”eat me”シグナルであるphosphatidylserineと貪食細胞のインテグリンに結合し、死細胞のengulfmentを促進する。MGF-E8ノックアウトマウス(KO マウス)は、二次リンパ組織でアポトーシス細胞を効率よく除去することができず、加齢とともに、自発的な胚中心反応を起こし、抗DNA抗体の産生と糸球体腎炎を発症する (Hanayama et al, Science 2004)。MFGE8ノックアウトマウスを長田重一研究室より、分譲していただいた。加齢に伴う自己抗体の産生を確認した後、移植実験の開始を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
自己抗体を産生しているMGF-E8 KOマウス(IgHaアロタイプ)に、121G9 GL KIマウスより得た成熟ナイーブB細胞(IgHbアロタイプ)を移入し、ドナー細胞由来の抗dsDNA抗体価を測定する。 MFG-E8 KOマウスにて、胚中心B細胞やクラススイッチしたメモリーB細胞へ分化したKIマウス由来B細胞について、single cell BCR cloningを行い(Tiller T et al., J Immunol Methods 2007)、1細胞に由来したペアのH鎖、L鎖の配列を決定する。同時に、組換え抗体を作製し自己反応性(抗dsDNA ELISA)を試験する。自己反応性の獲得が、厳密なクローン選択によって行われているのであれば、限局したSHMの挿入が認められる。ヒトSLEで起こる自己反応性獲得が再現された場合、121G9レパトアにおいて、自己反応性を決定づける変異を同定し、その保存性を確認する。また、ドナー由来細胞の局在を組織切片から同定する。もし脾臓瀘胞外領域での親和性成熟を疑う場合、microdissectionにより細胞を分離し、BCR遺伝子の配列を決定する。
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Research Products
(3 results)