2017 Fiscal Year Research-status Report
CD4+T細胞分化における新規TCR-PKD-SHP-1 axisの役割
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16K08841
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石川 絵里 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (20546478)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | T細胞分化 / セリンスレオニンキナーゼ / チロシンフォスファターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は以前、セリン/スレオニンキナーゼの1つであるプロテインキナーゼD (PKD)が未熟T細胞の、とりわけCD4+T細胞への分化において重要な役割を果たすことを見出し、新規PKD基質としてチロシンフォスファターゼSHP-1を同定した。本研究は、こうした独自の知見に基づき、CD4+T 細胞分化における新規TCR-PKD-SHP-1 axisの役割を明らかにすることを目的としている。 前年度樹立したSHP-1のPKDによるリン酸化部位を変異させたリン酸化不能型変異体(SHP-1.S557A)のノックインマウスの解析結果から、生体内においてもPKDによるSHP-1のリン酸化がCD4+T細胞分化に寄与していることが示唆された。そこで、当該年度はPKD-SHP-1 axisがCD4 lineage決定においてどのような働きをしているかを明らかにすることを目的とし解析を進めた。 変異体SHP-1ノックインマウス由来細胞におけるCD4 lineage決定のマスター転写因子ThPOKの発現は、野生型マウスと遜色なかった。また、リン酸化SHP-1特異的な結合分子の同定を試みたが、これまでのところ目的とする分子は検出できていない。そこで、PKD下流における基質としてのSHP-1の重要性を検証するため、PKD欠損マウスとSHP-1欠損マウスの交配を進めている。 また別のアプローチとして、PKD同様にSHP-1を介してT細胞分化におけるTCRシグナルの誘導に働くことが報告されているThemis分子に着目した。PKD-SHP-1 axisとThemisとの関連を明らかにするため、CRISPR/Cas9システムによりThemis欠損マウスの作製を試み、現在樹立できつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに得られた結果よりPKDによるSHP-1のリン酸化がCD4+T細胞分化に寄与していることが示唆されたことから、当該年度以降はPKD-SHP-1 axisがCD4 lineage決定にどのように寄与しているかを明らかにすることを目的とし研究を進めている。前年度樹立したリン酸化不能型変異体SHP-1(SHP-1.S557A)ノックインマウスにおいて、CD4 lineage決定のマスター転写因子であるThPOKの発現は野生型マウスと遜色なかった。また、PKDによるSHP-1リン酸化の機能的役割を明らかにするため、リン酸化SHP-1ペプチドを用いた胸腺細胞ライセートのプルダウンアッセイにより、PKDによりリン酸化されたSHP-1に特異的に結合する分子を同定することを試みた。しかし、これまでのところ目的とする分子は検出できていない。 そこで別のアプローチとして、PKD同様にSHP-1を介してTCRシグナル誘導に働き、またその欠損マウスでは、PKD欠損マウスとよく似た表現型を示すことが報告されているThemis分子に着目した。PKD-SHP-1 axis とThemisとの関連を調べるため、Themis欠損マウスの樹立を試み、欠損マウスにおいて末梢血中のT細胞が減少することを確認した。また、Themis欠損マウスではSHP-1欠損マウスとの交配によりT細胞分化障害がキャンセルされることが報告されている。そこで、PKD欠損マウスにおいても同様の現象が見られるかを検証するためSHP-1欠損マウスとの交配を行い、現在多重欠損マウスが得られたところで、概ね順調に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
PKD-SHP-1 axisのCD4+T細胞分化における機能的役割を明らかにするため、次年度は、CD4 lineage決定に障害があることによりMHC classII拘束性の細胞でもCD8+T細胞になってしまうという、“redirection”という現象が、変異体SHP-1ノックインマウス由来細胞で見られるか否か検証を行う予定である。 また、当該年度はPKDによりリン酸化されたSHP-1特異的な結合分子の同定を試みたが、これまでのところ同定できていない。そこで、次年度は変異体SHP-1ノックインマウスを用いたリン酸化プロテオミクス解析を行い、もし当該マウスにおいてリン酸化分子の変化が認められれば、PKDによりリン酸化されたSHP-1の下流分子を同定できる可能性がある。 PKD欠損マウスとよく似た表現型を示すThemis欠損マウスの研究から、ThemisはSHP-1の機能を抑制することによりTCRシグナルの誘導に働き、T細胞分化に寄与していることが報告されている。PKD-SHP-1 axisとThemisとの関連を明らかにするため、現在作製中のThemis欠損マウスが樹立できた後には、当該マウスでTCR刺激に伴うPKDやSHP-1のリン酸化を調べる予定である。また、PKD下流における基質としてのSHP-1の重要性を検証するため、PKD欠損マウスとSHP-1欠損マウスとの多重欠損マウスの解析を行う予定にしている。
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Causes of Carryover |
所属研究機関移動に伴い生じたマウスの減少により、予定していたよりマウス維持費がかからず「物品費」に差額が生じた一方で、マウス輸送費が直接経費の「その他」に計上されたため、当該年度における「その他」の執行額が高くなった。
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Research Products
(2 results)