2017 Fiscal Year Research-status Report
クロマチン制御因子TRIM28による自己反応性Th17の抑制機構
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16K08847
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
竹馬 俊介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50437208)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 免疫寛容 / 自己免疫疾患 / 免疫記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
クロマチン制御因子であるTRIM28分子をマウスのTリンパ球で特異的に欠失させると、自己反応性のIL-17産生性ヘルパーT細胞(Th17)が分化、活性化し、自己免疫疾患を発症して早期に死亡することを報告している (Chikuma et al. Nat.Immunol. 2012) 前年度に作成した、自己反応性TCRトランスジェニックマウスと薬剤を用いた自己免疫誘導モデルを詳細に解析したところ、TRIM28分子の欠損下では、トランスジェニックTCRが認識する自己組織以外に、いわゆるリンパ球増殖症候群(lymphoproliferation)が発症し、TRIM28は、抗原非特異的、または、自己抗原に非常に弱い親和性をもつT細胞の恒常性維持に関わっている可能性が示唆された。 以上の結果をふまえ、TRIM28に機能不全が無いTCRトランスジェニックマウスを解析すると、ターゲット臓器特異的な自己免疫反応が観察された。さらに、発症マウスの患部に集積した病原性T細胞の他に、トランスジェニックTCRでない、別のクローンが有意に増殖していることがわかった。この、いわゆるbystander cloneは、(1)患部の別の抗原に反応する病原性クローンであるか、(2)炎症を修復するべく出現した抑制性T細胞である2つの可能性を持つ。さらに、当モデルにおいて、マウスに定期的な抗生物質投与を行うことによって自己免疫疾患の誘導が抑制され、自己寛容の破綻における、常在細菌の関与が示唆された。 以上の結果を国際サイトカイン学会にて口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、体内のほとんどのT細胞が自己組織に反応するにもかかわらず、自己免疫を発症しないという、典型的な自己慣用モデルを確立し、さらに、薬剤や細胞移入によって自己免疫疾患を発症させるユニークなモデルを開発することができた。メカニズム解析についてもおおむね順調に進行中で、自己寛容の新規メカニズム解明に関して発展性がある結果が出ていると考えている。本研究、および関連研究に関する成果発表も順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
患部に見られたbystander cloneの機能解析を通じて、当モデルにおける自己寛容破綻のメカニズムを追及する。
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Causes of Carryover |
29年度中、自己免疫モデルの発症に特定の細菌が関与している可能性が見出された。マイクロビオーム解析を計画したが、サンプルの収集が遅れたため、当該助成金は、繰り越して30年度の助成金とともに使用する予定である。
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