2016 Fiscal Year Research-status Report
T前駆細胞における未分化性維持とT細胞分化決定の分子機構解析
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16K08848
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
穂積 勝人 東海大学, 医学部, 准教授 (30246079)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Lmo2 / Bcl11a / Tcf1 / Notch1 / T細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで、Ebf1遺伝子欠損マウスより、T細胞へ分化可能なpro-B(+)細胞株と、この分化能を持たないpro-B(-)細胞株を、それぞれ樹立した。両細胞間に、Lmo2遺伝子発現に差異を見出し、pro-B(-)細胞へのLmo2の強制発現によりT細胞分化能を付与できることから、未分化造血細胞におけるT細胞分化能の維持にLmo2が重要な役割を担うことを示した。本年度は、Lmo2によるT細胞分化能維持の分子機構について、解析を試みた。 Lmo2を過剰発現させたPro-B(-)細胞における発現遺伝子を、Pro-B(+)、Pro-B(-)細胞とともに網羅的に比較し、Lmo2によって直接的に誘導される遺伝子を抽出した。その結果、Bcl11a、Bcl2a1の2つの遺伝子がLmo2によって直接的に発現誘導されていることが示唆された。両遺伝子とも細胞生存に寄与することが推測され、Bcl11a下流にて機能するBcl2の過剰発現によって、Notchシグナル耐性能を獲得することから、pro-B細胞期のNotchシグナル応答性にはBcl2ファミリーによる生存維持機構が重要であることが示唆された。 しかし、Bcl2発現Pro-B(-)細胞はT細胞には分化できず、細胞生存の保証に加えて、T細胞分化プログラムの進展に資する機構の存在が予測された。これに符合し、T細胞分化に必須であるTcf1の発現が、Pro-B(-)細胞では認められなかった。また、Pro-B(-)細胞では、Tcf7遺伝子が高度にメチル化されているのに対し、Pro-B(+)やLmo2発現Pro-B(-)細胞では脱メチル化されていた。このことから、Lmo2は、Tcf7遺伝子の脱メチル化状態を維持し、NotchシグナルによるTcf7遺伝子の発現誘導を担保していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Lmo2によるNotchシグナル受容性維持の分子機構については、順調に解析が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
Lmo2機能発現の分子機構を詳細に理解する必要がある。まず、造血未分化細胞におけるLmo2複合体の構成分子群を明確にする。HA-tagを付加したLmo2分子を導入したpro-B(-)細胞にて、抗HA抗体による免疫沈降を行い、共沈する分子の同定を目指す。さらに、Bcl11a、Tcf7両遺伝子が、Lmo2複合体の標的と考えられるので、クロマチン免疫沈降法(CHIP)による同遺伝子領域への直接的な結合を検出することで明瞭な結論を導く。 T細胞分化決定におけるNotch下流事象の網羅的解析については、現在、実験系の構築を急いでいる。今年度の課題としたい。
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Causes of Carryover |
予定していたHA-tagあるいはBiotin化DNMAML1を用いたCHIP-Seq系の実験が未達となり、経費の繰越となった。本年度に実現すべく、準備を進めている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記したCHIP-Seq解析を予定している。
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Research Products
(1 results)