2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K08854
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川畑 秀伸 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (20325864)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 医学教育 / 診療参加型臨床実習 / 医学生教育 / 研修医教育 / 探索的研究 / カリキュラム開発 / 指導医 / 医療チーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、研修医による医学生指導の現状と対応に関する調査である。平成29年度は、インタビュー調査と分析を行った。その結果、研修医が医学生を指導することは、両者にとって有効であり、さらに、指導医や診療チームに対してもよい影響をもたらしていた。欠点として、医療や医学生指導について研修医の経験が浅い点、また、自らの研修と診療業務が主となり医学生教育は従となっている点からくる弊害が示唆された。次に調査結果を示す。 対象者は本研究の主題について経験があり、建設的な意見が期待できるインタビュー対象者12名を選定した。属性は、平均年齢38歳(男性10名、女性2名)、医学生2名、前期研修医3名、指導医7名であった。質問内容(インタビューガイド)は次の5つである。1)研修医が指導することでよい点、2)悪い点、3)研修医が医学生に指導すべき内容、4)医学生指導にあたる研修医に必要な準備、5)医学生指導における指導体制について、各々開放型の質問で30分~50分かけて半構造化個別インタビューを実施した。すべてICレコーダーで録音し、音声データを活字化して内容分析を行った。 結果として6つのテーマが抽出された。1)学習機会:病棟での患者診療が医学生の学習の場であるため研修医との関りが多い。2)親近性:医学生と研修医は学習レベル、医療体制上の立場、年齢が近く共通点が多いことが医学生教育に良い影響を与えている。3)指導内容:指導内容は研修医の判断で実施されている。4)波及効果:研修医の学習、指導医の負担軽減、教育文化の醸成、医療チーム内のコミュニケーション改善などにおいて効果を示している。5)限界:研修医の労働負荷、診療と医学生指導の経験不足は負の影響がある。6)準備:医学生指導の目標、方法、評価について研修医を含めた診療チーム全員が共有し、医学生教育に精通した指導医による管理運営が必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、予定していたインタビュー調査と分析を実施でき、主要な調査結果が明らかとなった。データ収集と並行して分析を行う過程で、インタビューガイドに若干の修正を加え、当事者が課題と考えている内容を研究主題に反映できた。データ収集と分析過程は、定期的に研究チーム内で発表と議論を行い、分析結果としてのテーマ抽出に至った。ただ、インタビュー対象者のうち、医学生と研修医からの更なるデータ収集は必要で、学会発表も同様と考える。これらの作業は平成30年度に実施できる予定である。以上より、当初予定された計画について大きな遅滞はなく、当初の予定通りの内容で進行できていることから、進捗状況の評価としてはおおむね順調に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はインタビュー調査の継続に加え、次の点を特に明らかにしていく。研修医による医学生指導の適用と限界の明確化、さらに、医学生指導に当たって研修医に求められ、かつ実行可能な指導内容、指導方法、その評価である。以下、これらの詳細を示す。 インタビュー調査では、今までに十分なデータが取れていないと思われる医学生と研修医からのインタビューを中心に5月から8月にかけて実施する。医学生は大学の5、6年生から、研修医は医学生実習を受け入れている複数の施設から対象者を選定する。また、指導医や事務職からのインタビューも重ねて実施する。これら調査の過程で、平成29年度に明らかとなった6つのテーマのうちの3つのテーマ(指導内容、限界、準備)については、現状や考えをさらに明らかにするため十分に配慮して調査分析を行う。 これらの作業により、医師や医学生の経験と考えに基づいた、研修医による医学生指導の適用と限界を明示することができる。さらには、研修医が担当する医学生指導の実行可能なカリキュラム(目標、方法、評価)とその準備・運営の具体案が示せると考える。これらの成果を10月の全国学会、11月の地方学会で発表し、同時に論文作成を進め年度内に論文投稿を行う。
|
Causes of Carryover |
予定していた研修医と医学生に対するインタビューが一部実施できず、その旅費、謝礼、データの活字化、データ保存機器などの費用がかからなかった。また、学会発表に至らずその旅費と参加費もかからなかった。平成30年度には、改めてこれらを実施するため、関連するインタビュー費用(旅費、謝金、データの活字化など)、およびが学会費用として計上する。
|