2016 Fiscal Year Research-status Report
医学教育における時間生物学的特性のモニタリングによる教育効果の実証的研究
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16K08867
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
安倍 博 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (80201896)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 医学教育 / クロノタイプ / 睡眠 / 概日リズム / 学業成績 / 心理検査 / アクチウォッチ / スリープスコープ |
Outline of Annual Research Achievements |
医学教育における学生の修学・精神・生活面の管理・指導への時間生物学的知見の応用・展開を背景として、今年度は、①医学科1年次学生のクロノタイプ・睡眠リズムと学生データベースの学業成績・心理検査結果との相関関係を調べ、②クロノタイプと睡眠リズムから抽出した学生に対して、腕時計型活動量測定装置(アクチウォッチ)による活動の概日リズム計測と、携帯型脳波計(スリープスコープ)による睡眠の質を計測し、生理・行動科学的指標に基づく①の結果の時間生物学的・睡眠生理学的裏付けを行うことを目的とした。 医学科1年次生(110人)を対象とし、時間生物学的項目として4月と10月にミュンヘン・クロノタイプ質問紙および睡眠日誌を測定した。心理検査項目として4月に大学生健康調査(UPI)、困りごとに関するセルフチェックリストを実施した。学業成績については1年次医学系コア科目である解剖・生化学系科目の初回試験合格科目数を用いた。クロノタイプと睡眠リズムパターンから学生を抽出し、規則型(コントロール)と不規則型に分類し、それぞれにアクチウォッチとスリープスコープによる生理・行動学的測定を実施した。 クロノタイプでは、睡眠調整MSF(朝型と夜型の指標)が4月に比較して10月にやや遅くなる傾向が見られた。睡眠日誌では、4月よりも10月に睡眠リズムが不規則になる学生が多く見られた。クロノタイプ、睡眠日誌と学業成績との間には有意な相関が得られなかった。しかし、UPIでは、健康項目が低いほど学業成績が高い傾向がみられ、ADHD傾向とクロノタイプ、うつ項目と睡眠日誌とに有意な相関が得られた。アクチウォッチとスリープスコープによるデータについては、現在解析中である。 以上の結果から、健康について楽観的である学生ほど学業成績が低く、また大学生活に慣れるにつれて生活リズムが不規則になっていく学生が多いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度実施計画における、①「質問紙による睡眠・概日リズム特性の測定と学生データベースとの相関の検討」については、すべての計画項目について、平成28年度医学科入学生に対して実施し、データを取得、相関関係の分析を行った。現在までの結果を平成29年度の日本医学教育学会で発表する予定である。 実施計画の②「睡眠・概日リズム特性の生理・行動科学的指標による検証と学生データベースとの相関の検討」については、①で抽出した学生に対して、アクチウォッチとスリープスコープによる概日リズムと睡眠の質についての測定を実施した。現在データ解析中である。 以上より、平成28年度の実施計画を概ね実施できたことから、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に実施したアクチウォッチとスリープスコープによる時間生物学的・睡眠生理学的指標の解析を進め、客観的データに基づく睡眠・概日リズム特性と学業成績・心理検査との相関を分析する。とくにスリープスコープについては、平成28年度は、対象者数を少なくして予備的に実施した。データは現在解析中であるが、問題なく実施が可能であり、さらに、現在までのところ興味深い結果が得られていることから、平成29年度ではさらに対象者数を増やして実施する予定である。 平成29年度は、平成29年度入学生に対して、28年度と同様の質問紙調査および行動・生理的指標の測定を実施し、データ数を平成28年度分にさらに加えて、睡眠・概日リズム特性と学業成績・心理検査結果との相関関係のさらに詳細な分析を行う。 平成28年度の分析で、睡眠・概日リズム特性と学業成績・心理検査結果に問題のある学生に対して、定期的な面接またはカウンセリングを行い、生活リズムの自己管理による修学・精神面での効果を見る。 【連携研究者】福井大学学生総合相談室・臨床心理士・前川伸晃
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Causes of Carryover |
平成28年度のスリープスコープによる睡眠測定を予備的に実施したため、実施対象者数が少なかった。そのためスリープスコープレンタル費および委託解析費、被験者謝金が、当初の予定より少なかったため、前年度分に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度では、前年度でのスリープスコープ測定から、問題なく実施可能であること、さらに、興味深い結果が得られる可能性があることを確かめたため、対象者数を大幅に増やす予定である。そのためのレンタル費および委託解析費、被験者謝金として、当初29年度に予定していた実施計画に基づく研究に使用するものと合わせて使用する。さらに、前年度実績を学会で発表するため、申請者および連携研究者(福井大学学生総合相談室・臨床心理士・前川伸晃)の旅費として使用する。
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