2018 Fiscal Year Research-status Report
医学教育における時間生物学的特性のモニタリングによる教育効果の実証的研究
Project/Area Number |
16K08867
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
安倍 博 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (80201896)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 医学教育 / クロノタイプ / 睡眠 / 概日リズム / 学業成績 / 心理検査 / スリープスコープ / 高照度光療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
医学教育における学生の修学・精神・生活面の管理・指導への時間生物学的知見の応用・展開を背景として、①医学科1年次学生のクロノタイプ・睡眠リズムと学生データベースの学業成績・心理検査結果との相関関係を調べ、②クロノタイプと睡眠リズムから抽出した学生に対して、腕時計型活動量測定装置(アクティウォッチ)による活動の概日リズム計測と、携帯型脳波計(スリープスコープ)による睡眠の質を計測し、生理・行動科学的指標に基づく①の結果の時間生物学的・睡眠生理学的裏付けを行うこと、さらに③睡眠・概日リズム特性と学業成績に問題のある学生に対する睡眠・生活リズムへの介入指導の効果を検討することを目的とした。 平成30年度は、29年度1年次学生に実施した②の調査の分析と結果の考察を行い、同時に30年度1年次学生への①と②の調査の実施と解析、さらに③について、29年度において抽出された学生に対して、高照度光療法による介入の効果を調べた。 ①については、30年度においても28・29年度と同様に、夜型傾向のある学生および睡眠リズムが不規則な学生ほど学業成績が低い傾向が見られた。②については、28年度の調査では、δパワー値に基づく最初の睡眠周期での深い睡眠が学業成績と関連することが示されたが、29・30年度の調査では、睡眠の質と学業成績とに有意な関係は得られなかった。③については、29年度に睡眠相が後退し留年した学生に対して、高照度光照射装置(ブライトライト、2500Lx)により自宅で4週間、起床時に近距離で15~30分間の光照射を行った。その結果、睡眠日誌において、睡眠リズムが改善する傾向が見られ、スリープスコープによる睡眠脳波計測においても、睡眠の質が改善する傾向が見られた。 以上の結果から、医学生の修学・精神・生活支援における睡眠・概日リズム指導の重要性を、さらに確かめることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度実施計画における①「質問紙による睡眠・概日リズム特性の測定と学生データベースとの相関の検討」および②「睡眠・概日リズム特性の生理・行動科学的指標による検証と学生データベースとの相関の検討」について、当初計画通り、平成28・29年度と同様の調査を実施した。同時に29年度に実施した②の解析を30年度に行った。30年度に実施した①と②の解析を行い、28年度および29年度のデータと合わせて考察を行った。さらに、30年度当初計画における③「生活リズム・睡眠指導による修学・精神面への効果の検討」について、当初計画通り介入指導による効果の検証を行った。以上により、調査・解析ともに当初計画通り進んでおり、学生支援における時間生物学的指標の重要性と、生活リズム・睡眠指導による学生支援の重要性についての知見を得ることができていることから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和元年度は、平成28~30年度の①および②の3年間のデータをまとめて分析し、結果をさらに詳細に考察し、研究の総括を行う。必要に応じて追加調査を実施する。とくに、②の結果が初年度とそれ以降で異なったことについて検討を進める。③については、30年度において睡眠・概日リズム特性と学業成績または心理検査に問題のあった学生に対する介入指導による効果の検証を行う予定である。総括した4年間の成果は、学会・論文等で発表する予定である。 以上により、睡眠と概日リズムの観点から、医学生の修学・精神・生活面における指導の妥当性を示し、学生支援における時間生物学的指導の重要性を検証し、得られた成果を実践的な啓発に活用する予定である。 【研究協力者】福井大学学生総合相談室・臨床心理士・前川伸晃。
|
Causes of Carryover |
(理由)平成30年度のスリープスコープによる睡眠測定の実施において、スリープスコープレンタル費および委託解析費、被験者謝金に余裕があり、そのため残額が生じた。
(使用計画)令和元年度では、睡眠指導介入による効果検証を追加実施する予定である。その際、スリープスコープによる睡眠脳波を測定するため、レンタル費および委託解析費、被験者謝金、および介入に用いる高照度光照射装置追加購入費として使用する予定である。さらに、最終年度における研究総括を学会等で発表するため、申請者および研究協力者(福井大学学生総合相談室・臨床心理士・前川伸晃)の旅費として使用する。
|