2017 Fiscal Year Research-status Report
疾病別社会的負担推計による地域医療構想の効果測定に関する研究
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16K08886
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
北澤 健文 東邦大学, 医学部, 助教 (30453848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 邦愛 東邦大学, 医学部, 講師 (50288023)
藤田 茂 東邦大学, 医学部, 講師 (50366499)
瀬戸 加奈子 東邦大学, 医学部, 助教 (50537363)
長谷川 友紀 東邦大学, 医学部, 教授 (10198723)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Cost of illness |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年の医療法改正により、都道府県は地域医療構想を策定することになった。これは2025年の医療ニーズの将来予測を行うとともに、それに対応した病床数の収束を都道府県のリーダーシップの下、調整会議により図ろうとするものである。現在の地域医療構想では、高度急性期、急性期等、病床機能区分別の医療ニーズは明らかにされるものの、当該地域での疾患別の社会的負担は明らかにされない。 本研究は、医療計画の中で取り上げられる5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)に関して、各疾病の社会的負担を疾病費用(Cost of illness: COI)法を使って都道府県別に推計し、時系列で明らかにするとともに、2025年における社会的負担の将来予測を行い、今後の医療資源配分に関連する意思決定の基礎資料を提示することを目的とする。 COI法は傷病にかかる費用を直接費用、罹病費用、死亡費用に分類する。直接費用には傷病によって直接生じる外来治療、入院等にかかる医療費が含まれ、罹病費用には傷病によって入院したり、治療をしたりすることによって失われる機会費用が含まれる。そして死亡費用は、死亡に伴う人的資本の損失額として推計される。本研究では、先行研究で得られた知見に基づき、負担の様態が異なる疾患の社会的負担の評価を可能にする。都道府県別の疾患別社会的負担の将来推計を明らかにすることにより、優先的に取り組むべき課題が明確になり、医療政策において合理的な意思決定を促進し、医療計画、地域医療構想の内容をより充実したものとすることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
都道府県別に疾病別社会的負担(Cost of illness; COI)を算出するためのデータセットの整備と前年度研究で構築した算出ロジックの検証をすすめた。直接費用の推計には社会医療診療行為別調査、医療費の地域差分析等、罹病費用の推計には患者調査、労働力調査等、死亡費用の推計には賃金構造基本統計調査等を用いた。都道府県別の値か得られない場合は、全国値を元に算出した。例えば都道府県別医療費は医療費の地域差分析から得た係数を全国値に乗じて求めた。 2014年における一人あたりのCOIは、胃がん7,434±1,296円、大腸がん9,592±1,697円、肺がん10,005±1,844円、脳血管疾患28,540±5,365円、虚血性心疾患11,439±3,048円、糖尿病10,375±1,791円、精神及び行動の障害28,288±7,928円であった。COIの構成要素別に変動係数をみると、直接費用では肺がん(0.47)、虚血性心疾患(0.42)の順に高かった。罹病費用でも肺がん(0.42)、虚血性心疾患(0.38)の順であった。死亡費用では虚血性心疾患(0.34)、精神及び行動の障害(0.27)、糖尿病(0.26)の順であった。都道府県別の平均在院日数、外来患者数の変動係数をみると、平均在院日数では肺がん(0.78)、外来患者数では胃がん、大腸がんで高かった(それぞれ0.41、0.40)。
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Strategy for Future Research Activity |
海外での疾病別COI推計に関する文献調査を継続し、推計手法や使用されているデータソースなどを整理するとともに、推計結果の政策過程への活用状況を明らかにする。COIを地域別に算出している事例について、推計手法とその限界を文献調査から明らかにする。 都道府県別疾病別COIを推計するためのデータソースの整備とロジック構築を継続するとともに、推計ワークシートを精緻化する。都道府県別疾病別COIの推計にあたり、都道府県別データが得られない場合の対応について、取り得る各手段や外挿するデータの内容について、それぞれ妥当性を検証する。得られた都道府県別推計結果について、変動係数などを用いてばらつきの状況を明らかにするとともに、ばらつきを生じさせる要因について検討する。 COI推計結果に基づく過去のトレンドから、2025年の各都道府県における疾病別社会的負担を将来推計するためのロジックを構築する。
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Causes of Carryover |
分析に用いる各種ハードウェア、ソフトウェアの更新時期が遅れたため、次年度使用額が生じた。次年度に、データセットの整備、COI算出ロジックの構築と検証、将来推計ワークシートの精緻化など、コンピュータを用いた作業を円滑に行うために必要なハードウエア類、外部記憶装置、統計処理用応用ソフトウェア等のコンピュータ周辺機器等の整備を適宜行う。効率的な演算を行うためのコンピュータの情報処理性能向上や応用ソフトウェアの導入を必要に応じて行う。また、これらの作業の実施過程で消耗される物品を適宜補充する。 国内外のCOI研究の専門家を対象としたヒアリング調査等を行うための出張を実施するほか、これまでの研究成果を関連する国内外の学会で発表するための出張も実施する。
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