2017 Fiscal Year Research-status Report
臓器提供意思表示行動など高関与型向社会的行動の説明モデルの構築と検証
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16K08892
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
瓜生原 葉子 同志社大学, 商学部, 准教授 (70611507)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 行動変容 / 高関与型向社会的行動 / 意思決定 / 臓器提供意思表示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,国際的に解明されていない臓器提供意思表示という高関与型向社会的行動における行動決定要因を明らかにし,行動を説明するモデルを構築することを目的としている。2年目の平成29年度は,前年度の先行研究調査から導出した意思決定の行動要因を用い、実装組織Share Your Value Projectによる実証と、国際比較調査により、意思表示行動の最適化モデルを構築することを試みた。 実装については、前年度の課題であった不安の軽減に焦点を当てた介入、自治体との協同でリーフレット投票企画を実施し、その結果を分析した。国際比較調査は、制度が異なる国2か国ずつ、すなわち、スペイン、フランス、イギリス、ドイツを対象とした。 これらの分析結果から、行動変容ステージによって,効果的な介入の方策は異なることが明らかとなった。無関心層に関心を持たせる段階では,臓器提供の現況および価値についての知識を提供し,共感や援助規範を高めること,ポジティブなイメージを醸成することが有効である。意思決定の段階では,家族と対話し,ネガティブなイメージ,不安な認識を軽減すること,提供の価値と合理的価値を高めることが有効である。意思表示行動に移す段階では,「家族へのメッセージ」という価値づけをし,「メッセージを残すことが万が一の場合に家族に心的負担をかけない」ことを伝えて意思決定の価値を高めること,家族や意思表示者と話し合う機会をつくり,表示への不安を取り除くこと,表示媒体を提供することが有効であることが分かった。 臓器提供意思表示を促す上で,家族と臓器提供について話す機会を設けること,正しい知識を得て誤解に由来する不安を軽減すること,「誇り」という社会規範を醸成することの重要性が示唆された。また,総合し、臓器提供意思表示行動メカニズムが導かれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実装が良そう以上に進んだため、そこから得られた知見と国際調査の分析結果により、体系的な臓器提供意思表示行動メカニズムを導くことができた。また、具体的な活動が明確化され,態度・行動変容の測定尺度項目、および2種の測定ツールを開発することができた。さらには、2月に、多様な分野の研究者、実務家、社会起業家、医療関係者、行政などが一堂に会する主催研究会を開催し、成果の社会還元を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の残された課題を解決するための、セグメント別の行動変容手法を開発する。新大学生の約67%が意思決定すら行えていないため,高校生までに一度は臓器提供について考え,意思決定を試みることが必要である。未来に向けて,小学生から年代別に行動目標を設定し,その目標にあった科学コミュニケーション手法で,体系的に行動変容を促進する必要があることが示唆された。そこで、10年後に「意思表示はあたりまえ」という社会規範を確立するため、未来の大学生、すなわち幼児から高校生までを対象とし、年代別に意思表示の行動決定因子を探索的に研究する。年代別に行動目標を設定し,その目標に適した科学的手法の開発・実装・検証を2年かけて行う。実証はShare Your Value Project(SYVP)というアクションリサーチ組織で行う。 2018年から2019年にかけて、以下の表に示すとおり,年代別に設定した行動目標に適した手法のについて,先行研究調査,定性調査から仮説の導出とそれを検証するための介入方法,教材・ツールを定め,各年代に適した機会で実装し,測定・評価する。 10月は「MUSUBU」と題した啓発イベントを行っている。したがって,「MUSUBU2018」,「MUSUBU2019」を実装と効果検証の機会として開催する。また,科学コミュニケーションや共創をテーマにした「サイエンスアゴラ」において、小学生から高校生への質的調査,探索的な社会実装の機会とする。 また、研究結果は、国内外の学術集会のみならず、多様な機会で市民に還元する。さらに、毎年2回「SYVPソーシャルマーケティング研究会」を主催し、研究成果を多用なステークホルダーに還元する。
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Causes of Carryover |
研究成果の発表を予定していた海外出張が家族の不幸により取りやめになり、海外旅費を使用しなかったため。また、実装にかかるツールの経費を削減することができたため。 次年度に、2回の海外報告(6月EURAM,7月ISMC)、国際調査の考察を深めるためのインタビュー調査(11月:交際調査対象のスペイン、フランス、ドイツ、英国)に使用する予定である。また、研究成果をより社会還元するため、研究会開催(2月)に使用する予定である。
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Research Products
(14 results)