2018 Fiscal Year Research-status Report
がん分子標的薬の代謝動態特性と感受性の個人差要因解明に基づく個別化投与設計
Project/Area Number |
16K08902
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
福土 将秀 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (60437233)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | がん分子標的薬 / 薬物動態 / 代謝 / 薬剤感受性 / 個別化投与設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん分子標的薬の代謝動態特性と感受性の個人差要因の解明を目的に、今年度は、初年度から継続中のパゾパニブ(PAZ)の臨床薬物動態に関して詳細な検討を実施した。入院または外来治療で導入となった患者(18名)を対象に、定常状態におけるPAZ血中濃度をLC-MS/MS法を用いて測定した。治療開始後1週目のPAZ平均血中濃度推移は、投与量の増加に応じて上昇が認められたが、600 mg/day投与により標準用量(800 mg/day)投与時と同程度の血中濃度が得られることが示唆された。また、400 mg/day投与時のPAZ平均血中濃度は、目標トラフ濃度と考えられている20.5 μg/mLを上回ることも示唆された。服用前および服用後3時間、12時間、24時間後のPAZ血中濃度と服用後24時間の薬物血中濃度-時間曲線下面積(AUC)の相関性は、いずれの測定時点においても良好な相関性を示すことが初めて明らかとなった(R2=0.94~0.99, P<0.0001)。従って、トラフ濃度に限らず、得られた回帰式に基づきターゲットのPAZ曝露量を得るために必要なトラフ以外の血中濃度の目標値の推定が可能であることが示唆された。また、治療開始後半年以上服薬継続することが可能であった症例の中に、維持用量で投与しているにも拘わらず、PAZ血中濃度が経時的に低下する症例が散見されたことから、薬物吸収または肝クリアランスの個体内変動が原因として推察された。従って、長期フォローアップにおいて、PAZ血中濃度低下に伴う治療効果減弱を回避するために、定期的なPAZ血中濃度の評価とそれに基づく用量調節が重要であると考えられた。 以上の研究成果は、PAZの臨床薬物動態を把握する上で有用な知見を提供するものであり、特にトラフ以外の薬物血中濃度を利用したPAZの用量調節の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の一つである、がん分子標的薬の体内動態特性に関する検討を進め、初年度から継続中のパゾパニブについて、個別化投与設計に関する新規の研究成果が得られた。また、がん微小環境に着目して、免疫チェックポイント分子PD-L1およびPD-L2の発現解析を目的に、特異的な抗体と組織透明化試薬を用いた3次元培養モデル細胞(multicellular tumor spheroids)の免疫蛍光染色の手法も確立することができた。 以上より、平成30年度の進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、がん分子標的薬の臨床薬物動態解析を推進する一方で、薬物動態の個人差に関わる代謝酵素やトランスポータの遺伝子多型との関連解析を中心に行う。また、生体内のがん微小環境を反映した3次元培養モデル細胞を用いて、タンパク質の糖鎖修飾に着目し、多剤耐性獲得機構や免疫チェックポイント分子PD-L1およびPD-L2の発現機構の解明に向けた検討を実施する。
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Causes of Carryover |
(理由) 外部研究資金(助成金等)の調達方法の工夫などにより、当初の計画より経費の節約ができたため。 (使用計画) 未使用額は、次年度の物品費に充てる予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Regorafenib pharmacokinetics and exposure-toxicity relationship in Japanese cancer patients2018
Author(s)
Fukudo M, Kubo Y, Shinden Y, Koeda M, Tani C, Miyamoto M, Asai K, Furukawa H, Ueno N, Okumura T, Tasaki Y
Organizer
第16回国際TDM会議 (IATDMCT2018)
Int'l Joint Research
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