2017 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質合成・分解異常に着目した自閉症スペクトラム発症の分子機序解明
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16K08924
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
笠井 慎也 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (20399471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 尚美 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (30450589)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム / 結節性硬化症 / 中間表現型 / 脳形態変化 / タンパク質合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
Tsc2(+/-)マウスにおける自閉症脳に特徴的な脳形態変化という中間表現型に関わる遺伝子発現変化を明らかにすることは、分子機能変化や細胞変化の解明に役立つと考えられる。本年度は、Tsc2(+/-)マウスの脳において網羅的遺伝子発現解析を行い、自閉症様行動変化に関連する遺伝子群に着目し、自閉症の病態に関わる分子機能変化を探索した。 生理食塩水およびrapamycinを投与した雄の成体Tsc2(+/-)マウスおよび対照マウスの全脳においてmicroarrayを用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、得られた遺伝子発現解析結果を用いてgene ontology解析およびpathway解析を行った。 Tsc2(+/-)マウスにおいて発現量が変化しrapamycinにより回復した転写産物は、検出可能なものの7.5%に当たる約1,000転写産物であった。ほとんどがTsc2(+/-)マウスにおいて亢進していることから、Tsc2(+/-)マウスでは予想通り転写機能が亢進していると考えられる。これら遺伝子発現変化と関連する上位の疾患は、悪性新生物あるいは炎症性疾患で占められた。また、関連する情報伝達系には炎症反応や細胞分化・組織新生に関する情報伝達系が上位にランクされた。 Tsc2(+/-)マウスの脳では特に炎症や組織新生に関わる遺伝子発現において亢進していると考えられる。mTOR-PI3K系の抑制剤は抗がん剤として臨床開発が進められていることなどからも、Tsc2(+/-)マウスの脳ではタンパク質合成が亢進し、悪性新生物や組織新生、炎症反応が起きやすい状態にあると考えられるが、自閉症様行動異常との関係はまだ不明であり、引き続きTsc2(+/-)マウスの脳における細胞分布変化を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H29年度は、本年度から平行して推進している他の研究プログラムに多くのエフォートを割く必要があり、本研究の申請時には計画していなかったことから一部分の実験を終了することが出来なかった。H29年度に計画していて終了できなかった実験は、引き続きH30年に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、Tsc2(+/-)マウスの脳形態変化という「中間表現型」の原因である、あるいは関連する脳神経病態とその時期を明らかにする。Tsc2(+/-)マウスの脳形態変化が認められた脳領域において、神経細胞やグリア細胞のマーカー分子(NeuN, IbaI, Gfap, Mbp等)で免疫組織化学染色を行い、各種細胞分布の変化を解析する。 Tsc2がコードするTuberinやその関連分子についてwestern blottingや免疫組織化学染色を行い、Tsc2(+/-)マウスの脳神経病態を明らかにする。さらにS6, Ulk1やユビキチン等、タンパク質合成・分解に関わる分子についても免疫組織化学染色を行う。また、TUNEL染色や細胞増殖・細胞死関連分子(PCNA, Ki67, p57kip, Bcl-x, Bax等)の免疫組織化学染色や遺伝子発現解析により、細胞変化の臨界点を明らかにする。
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Causes of Carryover |
H29年度は、本年度から平行して推進している他の研究プログラムに多くのエフォートを割く必要があり、本研究の申請時には計画していなかったことから一部分の実験を終了することが出来なかった。H29年度に計画していて終了できなかった実験は、引き続きH30年に実施する予定である。
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[Journal Article] Genome-wide scan identifies candidate loci related to remifentanil requirements during laparoscopic-assisted colectomy.2018
Author(s)
2.Nishizawa D, Mieda T, Tsujita M, Nakagawa H, Yamaguchi S, Kasai S, Hasegawa J, Fukuda KI, Kitamura A, Hayashida M, Ikeda K.
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Journal Title
Pharmacogenomics
Volume: 19
Pages: 113-127
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 結節性硬化症モデルマウスにおける幼若期NMDA投与による点頭様発作の解析.2017
Author(s)
柏井洋文, 笠井慎也, 萩野洋子, 佐藤敦志, 古田島浩子, 田中美歩, 小林敏之, 樋野興夫, 岡明, 水口雅, 池田和隆.
Organizer
第51回日本てんかん学会年次学術集会
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[Presentation] Associations between polymorphisms close to the cAMP responsive element binding protein 1 (CREB1) gene and the activating transcription factor 2 (ATF2) gene and fentanyl sensitivity.2017
Author(s)
Aoki Y, Nishizawa D, Yoshida K, Hasegawa J, Kasai S, Takahashi K, Koukita Y, Ichinohe T, Hayashida M, Fukuda K, Ikeda K.
Organizer
5th Congress of Asian College of Neuropsychopharmacology (AsCNP 2017)
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