2016 Fiscal Year Research-status Report
抗DNA抗体は生細胞に結合/侵入して全身性エリテマトーデスの病態形成に関わるか?
Project/Area Number |
16K08929
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
窪田 哲朗 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 教授 (90205138)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 抗DNA抗体 / 抗エノラーゼ1抗体 / 全身性エリテマトーデス / 肺高血圧症 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗DNA抗体が全身性エリテマトーデス(SLE)の病態形成にどのように関わるかを明らかにするために,モノクローナル抗DNA抗体2C10,H241,WB-6などを,培養細胞株THP-1,EA.hy926などと培養し,フローサイトメータおよび蛍光顕微鏡で観察した。その結果,抗DNA抗体は1-2時間の培養中に生細胞の細胞質または核に取り込まれることが確認できた。アイソタイプコントロールのIgG抗体は取り込まれなかった。抗体とともに培養した直後の細胞はannexin Vでは染色されず,細胞膜が傷害されていない生細胞であることが確認された。この結果は,第60回日本リウマチ学会のInternational Concurrent Workshopで発表した。さらに,このような抗DNA抗体の取り込みは,細胞をDNase 1で処理すると減弱することが明らかにされ,抗体がまず細胞表面に付着しているDNAを介して細胞に結合することが示唆された。この結果はThe 13th International Workshop on Autoantibodies and Autoimmunityにて発表した。 一方,SLE,混合性結合組織病(MCTD),全身性硬化症(SSc)などの症例から得たIgGを,ヒト肺動脈平滑筋細胞株に添加して,その機能に与える影響をBoyden chamber法,蛍光免疫染色法などで検討した。その結果,肺高血圧症を合併しているSLE患者から得たIgGは肺動脈平滑筋細胞の遊走能を更新させ,肺高血圧症の病態形成に関わっている可能性が示唆された。このIgGは,肺動脈平滑筋細胞のエノラーゼ1と反応することも明らかになった。この結果は,第60回日本リウマチ学会のInternational Concurrent Workshop,および第11回日本臨床検査学教育学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにモノクローナル抗体および患者血清中の抗体を用いて,免疫組織化学的方法とフローサイトメトリーで,抗DNA抗体が生細胞中に侵入することを何度も確認してきた。細胞としては,ヒト単球系細胞THP-1,ヒト血管内皮系細胞EA.hy926を用いてきた。しかし,抗体のロット,細胞の状態,培養条件などによって侵入の度合いが大きく異なり,一定した結果が得られていない。国際学会に口頭発表することができたが,さらに検討を進めて安定した結果を得て,学術雑誌に投稿することを目指したい。 また,抗エノラーゼ1抗体陽性の患者IgGが,ヒト肺動脈平滑筋細胞の遊走を亢進させる興味深い結果が得られたが,まだ症例数が少ないこと,エノラーゼ1結合活性と,肺動脈平滑筋細胞に影響を及ぼす活性とが,同一の抗体によるものか否かが不明であること,などの問題点があり,今後検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに検討を進め,抗体侵入のメカニズムを解明する必要がある。これまでの結果から細胞表面に付着しているDNAや,microparticleが抗体の結合に関わっている可能性が示唆されているが,この点をさらに検討する。抗体が侵入した結果,細胞にどのような影響が生じ,SLEの種々の病態の形成にどのようにゆくのかも明らかにしたい。これまでの結果から,抗DNA抗体の侵入によって,IFNαの産生が誘導される場合があることが示唆されたが,安定した結果が得られるよう,検討を重ねる必要がある。また,SLEの中枢神経系病態と抗DNA抗体の関連性について検討するために,ヒト神経系細胞株LA-N-2を入手したので,このような細胞を用いた検討も行う。 免疫組織化学的方法とフローサイトメトリーに加え,連携研究者である星教授のグループとも共同して,電験的検討も開始している。
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Causes of Carryover |
直接経費の99%以上を使用し,端数が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度もほぼ予定通りの金額を使用して研究を進めてゆく。
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