2017 Fiscal Year Research-status Report
抗DNA抗体は生細胞に結合/侵入して全身性エリテマトーデスの病態形成に関わるか?
Project/Area Number |
16K08929
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
窪田 哲朗 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 教授 (90205138)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / 抗リン脂質抗体症候群 / 自己抗体 / 膠原病 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗DNA抗体が全身性エリテマトーデス(SLE)の病態形成にどのように関わるかを明らかにするために,各種の細胞をモノクローナル抗DNA抗体2C10,WB-6,H241などと共に1-2時間培養して,抗体の有無が細胞に及ぼす影響を蛍光顕微鏡,電子顕微鏡,フローサイトメータ,酵素抗体法などで評価した。平成28年度は主に単球系細胞株THP-1,血管内皮系細胞株EA.hy926などを用いて検討したが,29年度は健常人末梢血単核細胞(PBMC)や,臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いた。その結果,抗DNA抗体はPBMCやHUVECの細胞内に取り込まれることが観察された。PBMCでは,主に単球に取り込まれ,リンパ球にはごく少量しか取り込まれないことが判明した。さらに,単球はWB-6を取り込むと共に,組織因子の発現を誘導することが観察された。WB-6はカルジオリピン-beta2-グリコプロテインI複合体とも反応する抗体であり,このような抗体がSLEに合併しやすい抗リン脂質抗体症候群の血栓形成傾向を誘導している可能性が示唆された。また,WB-6はHUVECに対して直接的には明らかな影響を及ばさなかったが,WB-6の存在下で培養したTHP-1の培養上清はHUVECにVCAM-1,ICAM-1の発現を誘導した。すなわち,抗DNA抗体が単球系細胞を活性化して炎症性サイトカインTNFalphaなどの産生を誘導し,間接的に血管内皮細胞を活性化するという新たな血栓形成機序が示唆された。 以上のような自己免疫疾患の病態に関する検討と並行して,マックルウェルズ症候群などの自己炎症疾患の病態解析に関する検討も進んでおり,学会,論文にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な細胞株や天然の細胞を用いて検討し,抗DNA抗体が生細胞に取り込まれることを確認した。どのような細胞にでも同じように取り込まれるのではなく,特に単球には良く取り込まれるが,リンパ球にはほとんど取り込まれないなど,細胞の選択性も明らかになってきた。一方,抗体の側も,どのような抗DNA抗体も同様に取り込まれるのではなく,カルジオリピン-beta2-グリコプロテインI複合体とも反応する抗体は細胞膜に結合し,一部が細胞質に侵入すること,2本鎖DNAに特異的な抗体は速やかに生細胞の核内に到達することなど,抗体の詳細な特異性によって差異があることも明らかになってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに基礎的な検討はかなり進んだので,これまでに得られたデータを整理し,さらに必要な追加実験を行って,自己免疫疾患で産生される自己抗体が自己炎症疾患の病態に関わる炎症のメカニズムにも関与して,膠原病の病態を形成しているという趣旨の論文を完成させたい。論文の第一報は現在執筆中であり,また平成30年度は既に4月の日本リウマチ学会で発表したほか,8月の日本臨床検査学教育学会,10月のアメリカリウマチ学会,11月の日本臨床免疫学会および日本臨床検査医学会への演題提出を予定している。
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