2018 Fiscal Year Research-status Report
ARMS患者血清中低分子濃度解析ならびに新規ARMS診断分析法の開発
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16K08944
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
福島 健 東邦大学, 薬学部, 教授 (00272485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻野 尚久 東邦大学, 医学部, 講師 (00459778)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 精神病発症危険状態(ARMS) |
Outline of Annual Research Achievements |
解糖系において、L-乳酸はピルビン酸からL-乳酸脱水素酵素により生合成される。一方、D-乳酸の生合成を触媒するglyoxalase (GLO)-Ⅰの活性低下は統合失調症の発症に関与することが報告されている。最近、脳内において学習や記憶のシグナル分子としてのL-乳酸の機能が報告され (Nature Rev Neurosci. 19:235-249, 2018)、乳酸への注目が高まっている。そこで、今年度は、統合失調症を含む精神病への発症リスクが高い状態 [精神病発症危険状態 (ARMS)] 群について、血清中グルコース代謝物に着目した。対象物質(グルコース対象物)として、グルコースのほかにピルビン酸、D-乳酸、L-乳酸を取り上げた。グルコース、ピルビン酸を市販キットによる酵素法で定量し、一方、D-ならびにL-乳酸の定量は、当教室で開発されたカラムスイッチングHPLC-蛍光検出法により測定することで、健常対照群の血清中濃度と比較解析した。次いで、ARMS群血清中グルコース代謝物の各濃度と臨床症状スコア(PANSSやSCoRS-Jなど)との関連性(Spearmanの順位相関行列による解析)を調べた。得られた結果として、ARMS群 (19±5.2歳, 27名)において、健常対照群 (22±2.4歳, 41名) に比べて血清中グルコース濃度の有意な増加、L-乳酸濃度及びL-乳酸/ピルビン酸比の有意な低下(p < 0.01)などが認められた。一方、D-乳酸濃度の有意な変動は認められなかった。更にARMS 群では、L-乳酸濃度と陰性症状スコアとの間に有意な負の相関が認められた (r = -0.6097, p < 0.01)。これらの結果より、ARMS群では解糖系におけるグルコースの代謝過程に異常が生じている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究プロジェクトが3年目になり、共同研究先である本学医療センター大森病院に来院されるARMSの方は、予想していた以上に低年齢層の患者が多いことが分かってきた。そのため、コントロール群との年齢、性のマッチングが現状では難しく、データ解析が困難となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
低年齢層の健常者をボランティアを募り、ARMS群との年齢や性別のマッチングを目指す。次いで、すべての血清サンプルのデータ解析後の研究成果をまとめ、論文投稿する。
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Causes of Carryover |
今年度もARMS患者血清中低分子物質の分析を進めていたが、研究分担者が属する本学医療センター大森病院へ来院されたARMS患者のうち、研究同意が得られたARMS患者が予定人数よりも少なかった。このため、研究代表者側が分析する血清サンプル数が少ないことで消耗品への出費が少額となり、次年度への繰り越し額が生じた。繰り越し額は翌年度分として消耗品、論文投稿費用に使用する。
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Remarks |
東邦大学薬学部 薬品分析学教室ホームページ https://www.lab.toho-u.ac.jp/phar/Analchem/index.html
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Research Products
(4 results)