2017 Fiscal Year Research-status Report
単球機能を標的とした肥満・糖尿病合併CKD進展予防の為の新規バイオマーカーの確立
Project/Area Number |
16K08959
|
Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kyoto Medical Center |
Principal Investigator |
山陰 一 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 糖尿病研究部, 研究員 (40598900)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 和彦 自治医科大学, 医学部, 教授 (60335510)
浅原 哲子 (佐藤哲子) 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究部長 (80373512)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 糖尿病 / 肥満 / 単球 / 炎症 / 脳心腎合併症 / 慢性腎臓病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、初年度に、肥満・糖尿病モデルマウスの骨髄の網羅的遺伝子発現解析から、新たな肥満・糖尿病感受性遺伝子としてTriggering receptor expressed on myeloid cells 2(TREM2)遺伝子を同定した。TREM2は主に単球やミクログリアに発現し、その機能(炎症性M1/抗炎症性M2極性)との関連の他、ゲノムワイド関連解析から認知症との関連も示唆されている。本年度は、申請者らによる肥満症・糖尿病コホート(JOMS/JDOS2)を基盤とした横断解析により、非肥満糖尿病患者にて、血清TREM2は糖代謝能悪化や炎症亢進(M1/M2極性異常)を介した認知機能低下の新規バイオマーカーとなる可能性を明らかにした(Diabetes Metab 2017)。当該知見に立脚し、肥満・糖尿病合併慢性腎臓病(CKD)の発症・進展におけるTREM2の病態生理学的意義の解明について、血清TREM2とCKDリスク因子(尿中ALBや推定糸球体濾過量 [eGFR]等)との関連解析等の準備に着手している。 また、申請者らは健常者と糖尿病患者において、肥満や炎症・動脈硬化進展との関連が示唆される腸内環境の検討から、糖尿病患者では腸内細菌叢の構成や機能が変化し、宿主の糖代謝能悪化と関連することを見出した(J Clin Biochem Nutr 2017)。そこで、糖尿病による腎機能障害において、動脈硬化関連因子である単球機能に加え、腸内環境の機能的意義についてもその解明が重要であることが示唆された。さらに、糖尿病患者において、最近注目される新規糖尿病薬により、その血糖降下作用と独立して、腎機能悪化の抑制効果が得られることを見出した。よって、糖尿病による腎機能悪化予防には、血糖降下作用とは独立した、単球機能改善を伴う効果的な新規標的経路の可能性が示唆される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 初年度に肥満・糖尿病モデルマウスの骨髄・単球細胞の網羅的遺伝子発現解析を施行し、肥満・糖尿病感受性遺伝子として、単球・マクロファージ(Mφ)・ミクログリア機能に密接に関わるTREM2を新たに同定した。本年度では申請者らにより構築された肥満症・糖尿病コホート(多施設共同)を基盤に、肥満・糖尿病患者における単球機能と単球・Mφ・ミクログリア系に存するTREM2の病態生理学的意義を検討した。その結果、非肥満糖尿病患者にて、血清TREM2は、高血糖や炎症亢進を介した認知機能低下の新規バイオマーカーである可能性を世界に先駆け明らかにした(Diabetes Metab 2017)。そこで、本知見に立脚し、当該コホートにて、肥満・糖尿病合併CKDの発症・進展におけるTREM2の病態生理学的意義の解明のため、血清TREM2とCKDリスク因子との関連解析等の準備に着手している。 2. 肥満・代謝や心血管病との関連が示唆される腸内環境について、本コホートを対象に日本人糖尿病における臨床的意義を検討することにより、日本人糖尿病患者では、腸内細菌叢の構成や機能が変化し、宿主の糖代謝能悪化と関連することを初めて明らかにした(J Clin Biochem Nutr 2017)。よって、糖尿病による腎機能障害においては、単球機能とともに、腸内環境の機能的意義についてもその解明が重要であることが示唆され、現在、腸内環境と単球機能および肥満・糖尿病合併CKDとの関連解析の準備を進めている。 3. 糖尿病患者にて、最近注目される新規糖尿病薬により、その血糖降下作用と独立して、腎機能悪化(eGFR低下等)の抑制効果が得られることを見出した。よって、糖尿病による腎機能悪化予防には、血糖降下作用とは独立した、単球機能改善を伴う効果的な新規標的経路の可能性が示唆される。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、計画I、IIにより、肥満・糖尿病の脳心腎合併症発症・進展に関わる新規候補分子としてのTREM2と単球機能の病態意義を明らかにする。計画IIIにより、糖尿病による腎機能悪化を抑制するための新規機序を検討する。以上より、肥満症・糖尿病に合併するCKD進展予防のための効果的予知指標・治療戦略の開発を目指す。 I. 肥満症・糖尿病コホートにおけるTREM2の臨床的意義の検討(臨床研究):本コホートを基盤とした横断・縦断解析にて、体組成・糖代謝指標・炎症、血清TREM2、単球機能(M1/M2極性)と認知機能変化やCKD発症・進展等との関連解析により、脳心腎合併症に影響する因子としてのTREM2の病態意義を解明する。さらに、腸内環境が血清TREM2、単球機能やCKDリスク因子に及ぼす影響を検討する。 II. TREM2の機能的意義の検討(基礎研究):モデルマウス(肥満・糖尿病やTREM2欠損)を用い、高脂肪食負荷による腎機能障害、認知機能変化、腎臓等の組織学的変化、脂肪組織を含む各組織の炎症レベル等を検討する。マクロファージ細胞株等を用い、遊離脂肪酸や炎症(LPS)等の刺激によるTREM2発現変化、炎症応答や関連シグナル経路の活性化レベル、TREM2のノックダウン等による炎症応答への影響を検討する。以上、肥満・糖尿病による腎機能障害とTREM2を介した炎症応答との関連を明らかにする。 III. 糖尿病治療薬による腎機能悪化抑制効果と機序の解明(臨床・基礎研究):本コホートにおける糖尿病患者を対象に、食事・運動療法や禁煙等の生活習慣改善に加え、薬物療法が血清TREM2、単球機能やCKDリスク因子に及ぼす影響を検討する。上記IIと同様のモデルマウスに様々な糖尿病治療薬を投与し、体組成、糖代謝能、腎機能、単球機能や血清TREM2への影響を検討し、CKD進展における新規機序を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
本研究計画における肥満症・糖尿病コホートについて、心血管病・慢性腎臓病等の臨床指標の検討や、薬物治療による効果の判定について、詳細な検討を施行しているため時間がかかり、次年度使用額が発生した。次年度には当該使用額も含め、研究計画にのっとって研究費を使用し、研究を推進する。
|
Research Products
(29 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Prediction of functional profiles of gut microbiota from 16S rRNA metagenomic data provides a more robust evaluation of gut dysbiosis occurring in Japanese type 2 diabetic patients2017
Author(s)
Inoue R, Ohue-Kitano R, Tsukahara T, Tanaka M, Masuda S, Inoue T, Yamakage H, Kusakabe T, Hasegawa K, Shimatsu A, Satoh-Asahara N
-
Journal Title
J Clin Biochem Nutr
Volume: 61
Pages: 217-221
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-