2017 Fiscal Year Research-status Report
NGSを用いた褐色細胞腫の遺伝的背景の解明-精密医療・先制医療を目指して
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16K08961
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川上 康 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70234028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹越 一博 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40261804)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 褐色細胞腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)今世紀に入り、褐色細胞腫の遺伝的なバックグランドが急速に解明され、遺伝性(germline遺伝子変異)は30-40%とされる。 褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)の原因遺伝子は20世紀までは、NF1.RET.VHLの3種類しか知られていなかった。他方、21世紀に入り2005までにSDHB. SDHC. SDHD 、最近でSDHA. SDHAF2. TMEM127.MAXと4つ、少なくとも現時点で計15類の遺伝子が同定されている(さらに発見が相次いでおり、一例報告まで含めると22種類も報告されている)。かって褐色細胞腫は10%病とも呼ばれたが、最近の研究の急速な進展により、遺伝性の頻度はこの有名な古典的な法則よりもはるかに高いとされている。最新のコンセンサスとしては、①褐色細胞腫の全体の30%が遺伝性(germline mutationを有する)である。事実、最近の米国内分泌学会の褐色細胞腫のガイドラインで200例以上の症例を集めた論文のメタ解析を行い、遺伝性の頻度は33.8%(1250/3694)と報告された(J C E M. 2014;99:1915-42)。すなわち、遺伝性の頻度に関して既にこの有名で古典的な10%ルールは現在の実情に沿わない。 2)SDHB の変異は褐色細胞腫の悪性化の診断マーカーになる。 悪性褐色細胞腫は比較的若年で遠隔転移を来たし、確立した治療法はなく進行性に増悪する罹病期間の長い予後不良な疾患である。悪性褐色細胞腫診断の最大の課題は良性との鑑別診断が不可能な点である。SDHB の変異のある場合は腹部のパラガングリオ-マを90%で初発とし、その後高率(45%)で遠隔転移(悪性化)することから悪性褐色細胞腫の早期診断マ-カ-になる。 2017年度は上記に加えて発端者60例検査施行し28例の変異を以下のように同定した(内訳:SDHB.8例,SDHD.16例,VHL.2例,RET.1例,TMEM127.0例,MAX.1例;不明1例)、未発症保因者6例中(4例SDHB.1例,SDHD.3例)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らが筑波大学で解析を施行した2007年から2017までの過去10年の結果は以下の通りである。現時点で277例解析済みである.発端者227例中変異陽性は81例で,変異陽性率は35.7%(81/227)(内訳:SDHB.39例,SDHD.11例,SDHA 1例,VHL.16例,RET.4例,TMEM127.5例,MAX.5例;SDHAは新型シークエンサーで同定)。本邦においても遺伝性はやはり10%を遥かに上回っている。以上より遺伝的なバックグランドを持つ褐色細胞腫・パラガングリオ-マは決して稀な疾患ではない。 SDHB変異陽性患者34例中39例が腹部パラガングリオ-マが初発(87.2%)で、悪性化した例が14例(14/39=35.9%)であった。悪性例46 例中14例がSDHB変異陽性であった(30.4%)。この結果は、日本においても遺伝子診断の重要性を示しており、特にはSDHB変異陽性の場合は腹部パラガングリオ-マが初発で悪性化しやすいことを示す。 2017年度は上記に加えて発端者60例検査施行し28例の変異を以下のように同定した(内訳:SDHB.8例,SDHD.16例,VHL.2例,RET.1例,TMEM127.0例,MAX.1例;不明1例)、未発症保因者6例中(4例SDHB.1例,SDHD.3例)
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Strategy for Future Research Activity |
昨年は全症例で66例と多数であり、この解析数を維持するとともに、英語論文化する。
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Causes of Carryover |
使用条件を満たす消耗品が見つからなかったため、次年度のシークエンス費用に用いる。
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