2017 Fiscal Year Research-status Report
アンチトロンビン抵抗性検出における抗血栓薬治療の影響を回避する新規検出法の開発
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16K08967
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高木 明 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (30135371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小嶋 哲人 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (40161913)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アンチトロンビン抵抗性検出法 / 抗血栓薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
His タグの付かない野生型および変異型プロトロンビン高発現細胞株 をネオマイシン耐性および培養上清のプロトロンビン抗原のウェスタンブロッティリング解析により確認した。野生型および変異型プロトロンビン高発現細胞株樹立した。野生型および変異型プロトロンビン高発現細胞株の培養上清を濃縮・バッファー交換し、野生型および変異型プロトロンビンとして実験を進めた。 野生型および変異型プロトロンビンを健常人血漿あるいはプロトロンビン欠乏血漿(抗プロトロンビン抗体によりプロトロンビンを免疫除去した健常人血漿)に添加した再構成患者検体血漿を解析材料として、精製系にて樹立した抗血栓薬存在下での不活化動態測定系が臨床材料においても解析できるように最適化した。 再構成検体血漿に実際の患者血漿に存在する濃度を基準に種々の濃度にヘパリン類(未分画ヘパリン、低分子量ヘパリン、ペンタサッカライド、ヘパラン硫酸)を添加してアンチトロンビン抵抗性トロンビン検出系に及ぼす影響を観察した。ヘパリン中和薬・ポリブレンの添加効果を検討した。 新規経口抗トロンビン薬服用患者モデルとしてダビガトラン添加患者血漿モデルを作成し、アンチトロンビン抵抗性検出への影響を検討した。 ビタミンK 拮抗剤による抗血栓療法(ワーファリン服用)のモデルとしては各種プロトロンビン発現細胞株の培養液にワルファリンナトリウムを添加・検討した。種々の濃度にワルファリンナトリウムを添加した培養液で各変異プロトロンビン発現細胞株を培養し、各変異をもったビタミンK拮抗剤服用下でのプロトロンビン(PIVKA-II)作成条件を設定した。培養液を回収し、リコンビナント各変異型PIVKA-II/プロトロンビンをプロトロンビン欠乏血漿に添加して再構成ワルファリン服用患者血漿モデルとして検討に用いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
再構成検体血漿に患者血漿に存在する濃度を基準に種々の濃度のヘパリン類(未分画ヘパリン、低分子量ヘパリン、ペンタサッカライド、ヘパラン硫酸)を添加してアンチトロンビン抵抗性トロンビン検出系に及ぼす影響を観察した結果、未分画ヘパリンの共存はトロンビン生成相を強く阻害することが観察されたが、その他のヘパリン類の影響は小さかった。また、トロンビン不活化相においては未分画ヘパリン、低分子量ヘパリンがトロンビン不活化を迅速化することが観察された。未分画ヘパリンによるトロンビン生成阻害効果、未分画ヘパリン・低分子量ヘパリンによるトロンビン不活化を迅速化効果ともに、検体希釈液にヘパリン中和薬・ポリブレンの添加することで回避できた。 新規経口抗トロンビン薬服用患者モデルとしてダビガトラン添加患者血漿モデルを作成し、アンチトロンビン抵抗性検出への影響を検討した結果、抗トロンビン薬のダビガトランの共存が生理的抗トロンビン分子のアンチトロンビンの作用を遅延させる結果となった。トロンビンの活性中心に低分子量のダビガトランが結合し分子量の大きなアンチトロンビンの作用に阻害的に働くことが示唆された。現在開発が進んでいるといわれるダビガトラン中和剤が使用可能になればその効果が確認できると思われる。 ビタミンK 拮抗剤による抗血栓療法(ワーファリン服用)のモデルでは、わずかにトロンビン不活化不良の傾向が観察された。検討の結果、不活化が悪くなっているのでは無く、活性化が遅延しトロンビン不活化相に入ってからもトロンビンが生成されていることが示唆され、ワーファリン服用患者血漿の場合はトロンビン生成が遅延するため十分に活性化後に不活化動態を観察することで不活化不良の傾向は無くなった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト凝固第X因子(野性型)の全長cDNA およびヒトFurin の全長cDNA をヒト肝臓由来cDNA ライブラリーよりPCR クローニングする。野生型凝固第X因子cDNA にアンチトロンビンとの親和性に重要と思われる部位(p.150Arg など)に変異を導入し変異型cDNA をクローニングする。野生型および変異型凝固第X因子発現ベクターを作成する。Furin発現ベクターを構築し、凝固第X因子・Furin共安定発現細胞を樹立する。比活性の正常なリコンビナント凝固第X因子発現系を構築する。 生理的凝固第X因子アクチベータ(活性型第VII因子・組織因子・カルシウムイオン)、生理的プロトロンアクチベータと作用機序が類似するラッセル蛇毒由来凝固第X因子アクチベータを用いる凝固第X因子活性化法を確立する。変異凝固第X因子の性状、検出測定法を検討・設定し、アンチトロンビン抵抗性凝固第Xa 因子を検出する測定系を設定する。アンチトロンビン抵抗性凝固第Xa因子検出検査法においても各種抗血栓薬の影響およびその回避法を検討する。 現行の遺伝的リスク解析(アンチトロンビン異常症、プロテインC異常症、プロテインS 異常症、トロンビンのアンチトロンビン抵抗性など)では原因が特定できない静脈血栓塞栓症患者血漿について、今回確立する患者由来トロンビンのアンチトロンビン抵抗性検出法、および患者由来凝固第Xa因子アンチトロンビン抵抗性検出検査法を実施することにより、静脈血栓塞栓症発症の遺伝的リスク検査法としての評価を実施する。
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