2016 Fiscal Year Research-status Report
T細胞性急性リンパ性白血病発症マウスのタンパク質解析による新規病態解明
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16K08972
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
木村 明佐子 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 講師 (40727939)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 守 千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (20401002)
野村 文夫 千葉大学, 医学部附属病院, 特任教授 (80164739)
松下 一之 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (90344994)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | T細胞性急性リンパ芽球性白血病 / c-myc / PK-M2 / Tandem Mass Tag (TMT) / LC-MS/MS / ノックアウトマウス / 癌代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
c-myc遺伝子の転写抑制因子であるFIR(FBP-interacting repressor)はFUSE binding protein(FBP)に結合するタンパク質で、p89DNAヘリカーゼ活性を抑制することによりc-myc遺伝子の転写を抑制し、その結果正常細胞はアポトーシスを起こす。しかしそのスプライシングバリアントであるFIR- Δexon2はFIRのドミナントネガティブとして働き、c-myc遺伝子の持続的な賦活化が惹起されてがん化が促進されていると考えられている。このFIRの選択的スプライシングの機能解析を目的として、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)を発症するc-myc遺伝子転写抑制因子FIRのヘテロ欠損マウス(T-ALLモデルマウス;p53-/-FIR+/-)を作製した。本研究ではT-ALLモデルマウス(p53-/-FIR+/-)の胸腺リンパ腫組織から抽出したタンパク質を試料として、網羅的にタンパク質同定と定量を行った。Tandem Mass Tag (TMT)ラベルを用いた比較プロテオーム解析により、T-ALLモデルマウスにおいてp53+/+FIR+/+(Wild type)マウスと比して差異の確認された648個のタンパク質を同定し、このうち45個のタンパク質では1.5倍以上の発現量の増減が確認できた。これらのタンパク質は、転写活性調節、DNA修復や複製、T細胞の活性化や増殖、アポトーシス誘導等に関わるものであり、特に腫瘍の形成と糖代謝にかかわるピルビン酸キナーゼ(PK)M2が約2.5倍(p<0.002)高発現しており、また、リンパ腫細胞を用いた定量的リアルタイムPCRにより、転写レベルでも増大することが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画として、2016年度(交付初年度)はFIRによるPKM1からPKM2のスイッチングがどのような分子メカニズムにより起こるのかについてメタボローム解析を行い詳細に調べるまでを予定していた。実験計画はほぼ予定通りであり、成果を論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
①ともにT-ALLを発症するp53-/-FIR+/-マウスとp53-/-FIR+/+マウスを用い、両者に生じる疾患増悪度の違いを胸腺リンパ腫組織や血清プロテオーム解析により検討する。見出されたタンパク質及びp53-/-FIR+/-マウスにおいて Wild typeマウスと比して差異の確認されたタンパク質(2016年度に確認済)とc-Mycの発現増大との関連を調べる。 ②T-ALLモデルマウスの新規発症機序の知見をヒトT-ALL臨床サンプルで確認し、T-ALLの新規早期診断マーカーとなりうるかの検証を行う。具体的には、T-ALL患者由来の組織あるいは血清を用い、動物モデルと同様にプロテオーム比較解析を行い、ヒトにおけるT-ALLの早期診断マーカー候補となりうるタンパク質を質量分析により同定する。③動物モデル及びヒトT-ALL臨床サンプルで同定されたタンパク質のウエスタンブロッティングによる発現確認・ELISA法などによる濃度測定などを行う。
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Causes of Carryover |
物品購入額が当初の見積よりも低く済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬・物品購入に充当する予定である。
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