2016 Fiscal Year Research-status Report
特発性血小板減少性紫斑病における骨髄巨核球成熟障害の病態解明
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16K08973
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
佐藤 隆司 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (90407114)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 特発性血小板減少性紫斑病 / 巨核球 / 自己抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は抗血小板抗体が産生され、網内系で血小板の破壊が亢進する自己免疫疾患である。一方、ITP患者の骨髄では、血小板産生細胞である巨核球の成熟障害が見られ、血小板産生能の低下も考えられているが、その機序は不明な点が多い。本年度は、ITPにおける自己抗体が巨核球成熟障害の病態に関与するか検討した。 ITP患者血漿中における抗トロンボポエチン(TPO)抗体や抗TPO受容体(TPOR)抗体の検出をTPO及びTPORのリコンビナント蛋白を固相化したELISA及びリコンビナント蛋白を用いた免疫沈降/ウエスタンブロット法で行った。その結果、ITP患者血漿中に抗TPO抗体は約24%、抗TPOR抗体は約10%認められ、健常成人血漿中には認められなかった。 次にヒト巨核球系細胞株UT-7/TPOを用いて、市販の抗TPO抗体や抗TPOR抗体がTPORの下流シグナルに与える影響を検討した。UT-7/TPO細胞はTPO依存性に増殖を示す細胞であり、培地には常にTPOを添加している。市販の抗TPO抗体および抗TPOR抗体をTPO含有UT-7/TPO細胞培地に加え、細胞を回収して、ERKのリン酸化をウエスタンブロット法で確認したところ、両抗体ともにERKのリン酸化の低下が認められた。抗TPO抗体や抗TPOR抗体は巨核球の成熟障害に関与する可能性が考えられた。 また、UT-7/TPO細胞抽出物をSDS-PAGEで電気泳動し、その後、ITP患者血漿を反応させるウエスタンブロット法で新規自己抗体の有無を検討した。しかしながら、この方法では非特異的なバンドが多く見られ、巨核球特異的な自己抗体は検出できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
市販の抗TPO抗体及び抗TPOR抗体を用いて、それらの抗体が巨核球系細胞であるUT-7/TPO細胞の成熟障害に関わることを見出した。また、ITP患者血漿から抗TPO抗体及び抗TPOR抗体を検出した。抗TPO抗体及び抗TPOR抗体のプロジェクトは進んでいるが、ITP患者における新規自己抗体の検出が遅れている。新規自己抗体の検出として、UT-7/TPO細胞抽出物とITP患者血漿を反応させるウエスタンブロット法を試みたが、巨核球特異的な自己抗体を検出ができなかった。新規自己抗体の検出では、他の方法である放射線同位元素を標識した抽出液を用いた免疫沈降法で検出を試みる予定であったが、RI施設での本研究の実験準備に時間を要し、まだ実験ができていない。現在はほぼ設備が整い、実験ができる状態となったため、これから放射線同位元素を標識した細胞を用いた免疫沈降法で自己抗体の検出に取りかかる。
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Strategy for Future Research Activity |
UT-7/TPO細胞と白血病細胞株であるK562細胞を35S-methionineで標識した抽出液を抗原に用い、患者血漿を反応させ免疫沈降法を実施する。UT-7/TPO細胞にのみ見られるバンドを巨核球系特異的な自己抗体と判断し、抗原の解析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
2016年度は、本研究内容と同じ競争的研究費を獲得していた。その競争的研究費の研究期間は1年のみであり、その研究費で消耗品などの購入を行ったため、次年度使用額が生じた。また、放射線同位元素を用いた実験が、RI施設の実験準備の都合上行えず、その実験に用いる消耗品の購入がなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
RI施設の実験準備や手続き等が終わったため、放射線同位元素を用いた実験を行う予定であり、それらの実験に用いる消耗品を購入する予定である。また、新規自己抗体の候補が認められれば、affinity-purification法および質量分析解析を行う予定である。
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