2017 Fiscal Year Research-status Report
特発性血小板減少性紫斑病における骨髄巨核球成熟障害の病態解明
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16K08973
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
佐藤 隆司 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (90407114)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 特発性血小板減少性紫斑病 / 巨核球 / 自己抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者血漿中から抗TPO(トロンボポエチン)抗体及び抗TPO受容体抗体を検出した。 平成29年度はUT-7/TPO細胞に抗TPO抗体または抗TPO受容体抗体が陽性のITP患者血漿(または精製IgG)を反応させ、TPO受容体の下流シグナルに与える影響を検討した。その結果、抗TPO抗体陽性例及び抗TPO受容体抗体陽性例、共に半数例でERKのリン酸化の減弱が見られ、機能的な自己抗体が存在することが明らかとなった。 TPO受容体に結合し巨核球系細胞の分化・増殖を促進するTPO受容体作動薬であるエルトロンボパグ(ELT) がITPの治療に用いられている。そこで、ELTを用いて抗TPO受容体抗体の存在下でもUT-7/TPO細胞のTPO受容体を活性化するかについて検討した。抗TPO受容体抗体陽性血漿(または精製IgG)とELTを添加したUT-7/TPO細胞ではTPOを添加した場合と比べ、全例でERKのリン酸化が亢進した。つまり、ELTは抗TPO受容体抗体陽性患者における巨核球成熟障害に対する治療薬として有効である可能性が示唆された。 ITP患者における巨核球由来の新規自己抗体の同定を行うため、UT-7/TPO細胞と白血病細胞株であるK562細胞を35S-methionineで標識した細胞抽出液を抗原に用い、患者血漿を反応させ免疫沈降法を実施した。その後、SDS-PAGEで電気泳動し、UT-7/TPO細胞にのみ見られるバンドが存在するか検討した。しかし、UT-7/TPO細胞にのみ見られる巨核球由来の自己抗体は認められなかった。一方、UT-7/TPO細胞及びK562細胞共に反応が見られるが、UT-7/TPO細胞抽出物と反応が強い自己抗体を3つ見出した。1つの自己抗体の自己抗原の解析を実施した結果、ヘキソキナーゼ1に対する自己抗体を新たに見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗TPO抗体及び抗TPO受容体抗体が陽性のITP患者検体を用いて、それらの検体がUT-7/TPO細胞の下流シグナルに影響を与えることを見出した。また、TPO受容体作動薬を用いた解析でも、治療効果の機序を解明するための基礎データが得られた。概ね、順調に進展している。 一方、ITP患者における新規自己抗体の検出は、UT-7/TPO細胞から抗原を抽出し、抗原修飾など様々な試行錯誤を行ったが、巨核球系細胞に特異的な自己抗体は認められなかった。しかし、そのような状況下でも解析を進めた結果、巨核球系細胞に特異的な自己抗体ではないが、ITP患者血漿からヘキソキナーゼ1に対する新たな自己抗体が検出された。そのため、概ね、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
抗TPO抗体や抗TPO受容体抗体の検体とUT-7/TPO細胞を用いた下流シグナルの解析を行い、機能的な自己抗体が半数例で見つかった。そのため、抗TPO抗体陽性例または抗TPO受容体抗体陽性例と抗体陰性例、機能的な自己抗体を有するITP患者とそれ以外のITP患者など、ITP患者を自己抗体の有無で2群に分け、臨床検査項目や自己免疫関連項目を比較検討する。検討項目は、血漿TPO濃度や血小板数、骨髄巨核球数、治療反応性などの血小板関連項目や自己免疫関連項目を検討する予定である。また、抗TPO抗体及び抗TPO受容体抗体産生B細胞を測定する新たな検査法の開発を行う予定である。 ITP患者における新規自己抗体の検出として、抗ヘキソキナーゼ1抗体が見い出させた。そのため、ITP患者における抗ヘキソキナーゼ1抗体の陽性率や臨床的意義について検討を進めると共に、他の新規自己抗体の自己抗原の解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度に本研究内容と同じ競争的研究費を獲得していた。その競争的研究費で消耗品などの購入を行ったため、平成28年度に次年度使用額が発生し平成29年度使用額が増額となった。平成29年度、比較的高額なRI実験や蛋白同定のための質量分析 (nanoLC-MS/MS) などを行い、順調に直接経費を使用したが、再び次年度使用額が発生した。 今後の使用計画としては、抗TPO抗体陽性例や抗TPO受容体抗体陽性例の臨床的意義の検討として、自己免疫関連のサイトカインの測定をELISAで測定するため、ELISAキットを購入する予定である。また、ITP患者における新規自己抗体の検出として、候補の新規自己抗体が認められているため、質量分析解析を行う予定である。
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Research Products
(1 results)