2016 Fiscal Year Research-status Report
メンデル遺伝病の補完遺伝子検査システムの構築と遺伝医療における社会実装
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16K08980
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
新井田 要 金沢医科大学, 総合医学研究所, 准教授 (40293344)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遺伝子検査 / 体細胞モザイク / CHIPS法 / COLD PCR法 / MugCap法 |
Outline of Annual Research Achievements |
責任遺伝子領域の大欠失が判明している結節性硬化症(TSC1, TSC2遺伝子)および神経線維腫症1型(NF1遺伝子)患者由来のDNAを用いてMugCap法を開発した。本法に関しては大きく2点を改良することにより、実用的なレベルに完成することが出来た。1点目は伸長反応酵素の変更である。当初は5’側プローブからの伸長反応にTaq polymeraseを使用していたが、この酵素は5’to 3’exonuclease活性を持つために、伸長して3’側プローブに達した際に停止せず、3’側プローブを5’端より分解しながらさらに伸長反応を継続する。Taq polymerase が3’側プローブを全て分解した場合、共通プライマー配列は遊離するためPCR反応で増幅されなくなる。この反応とTaq ligase による結合反応とが競合するために、実験毎、プローブ毎に有効なPCRテンプレートの産生量にばらつきが生じる。この結果、安定した定量性(コピー数測定)が得られない。そこで伸長反応酵素を5 to 3’exonuclease活性を持たない Klen Taq polymeraseに変更する事で問題を解決し、安定した結果が得られるようになった。2点目は解析手法の変更である。当初はアガロースゲル電気泳動のイメージをフリーソフト(Image J)で解析し、ピークの面積比からコピー数の変動を算定していたが、この方法ではバックグラウンドピークの水準を一律に規定する事が難しく、実験毎、プローブ毎の誤差が大きくなる。そこで共通PCRプライマーの片方を蛍光標識し、キャピラリーシーケンサ―によるフラグメント解析を行った。これによりばらつきのない安定した結果が得られるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MugCap法に関しては実験系が確立され、臨床応用段階に入った。当初の計画よりも精度、汎用性の高いシステムとなり順調な経過と言える。 一方、今年度はCOLD-CHIPS (co-amplification at lower denaturation temperature PCR with CHIPS)法の開発も行ったが、まだ条件決定が必要である。様々なタイプの1塩基置換および欠失/挿入変異の検体よりパネルを作り、患者DNAを対照DNAで希釈した系列をつくり、仮想的なモザイク変異状態のサンプルを作成した。COLD-PCRにより、これらのモザイク変異の濃縮が可能であるかどうかを検討したが、現在のところは効率的な濃縮は得られておらず、条件の至適化が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
MugCap法に関しては、今年度の改良によりプローブの多重化が容易である事が示された。また、異なる共通PCRプライマー配列を持つプローブを混合して、同時にハイブリダイゼーションした場合、各プライマー毎に異なるプローブセットを増幅できることも確認された。プライマー毎に異なる蛍光色素で標識すれば、フラグメント解析上はPCR産物を混合して1サンプルとして流すことが出来るため、解析効率は飛躍的に向上する。今年度はこの多重化MugCap法を至適化し、比較的頻度の高い、或いは臨床上重要な微細欠失症候群を網羅的にスクリーニングする診断パネルを作成する。DNAマイクロアレイの結果と比較することで精度を確認しながら、金沢医科大学病院遺伝子医療センターを受診する患者の診断に応用していく。 結節性硬化症などの遺伝性疾患では、血液における0.1%のモザイク変異は症状発現に有意な場合もある事、また次世代に遺伝し、子どもが発症し得る事が示されており、低頻度モザイク変異の同定は臨床上重要な課題である。次世代シークエンサーで0.1%のモザイク変異を検出するには、原理的に1000 depth以上のリードが必要となり、これはコスト面から臨床応用は困難である。COLD-CHIPのような安価かつ高効率に検出できる系が必要となる。COLD-PCRに関しては、プライマー、反応サイクルパラメータ、検出法の各々につき条件設定と至適化を行う。最終的には0.1%以下のモザイク変異が検出できる系を構築する事を目指す。また、既知の変異の低頻度モザイクの検出には Kinetic hairpin oligonucleotide blockersやNested MLPA (multiplex ligation probe amplification)法など他の方法も比較検討する。
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Research Products
(8 results)