2017 Fiscal Year Research-status Report
メンデル遺伝病の補完遺伝子検査システムの構築と遺伝医療における社会実装
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16K08980
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
新井田 要 金沢医科大学, 総合医学研究所, 教授 (40293344)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遺伝子検査 / 体細胞モザイク / CHIPS 法 / COLD PCR法 / MugCap法 / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
MugCap法に関しては、Klen Taq polymeraseへの変更と、蛍光キャピラリーシーケンサ―によるフラグメント解析の導入により、TSC1/2やNF1以外の他の複数の遺伝子においても、コピー数決定が容易に行えることが示された。実際の症例においても、この技術は、Long-PCR法と組み合わせる事で、ミトコンドリア三頭酵素欠損症の責任遺伝子HADHAの未知の大欠失変異のbreak pointを決定することが可能であった(Bo et al. Journal of Human Genetics 62,809-814, 2017)。予めMugCap法によるスクリーニングで欠失が存在すると目されるゲノム領域周辺を、2コピー領域と1コピー領域(欠失領域)に仕分けておき、欠失を跨ぐ最近傍の2コピー領域にLong-PCR Primerを設定することで、break pointを含むPCR増幅産物を得ることが出来た。この産物を、ダイレクトシークエンスすることで、break pointのDNA配列を決定し、Alu-Alu recombinationによる欠失であることを、クローニングすることなく突き止めた。これはAnchored Long-PCR法の応用例の一つとして注目に値する成果である。また、COLD-PCRで1st PCR産物中の低頻度変異を濃縮するためには、2nd PCRプライマーとして、よりTm値が低いものを使用する必要があることが判明した。これは、ヘテロデュプレックス形成時にプライマーがアニーリングしないように、温度差(分別マージン)を設けるという事であり、これがCOLD-PCRのキーテクノロジーとなる。各1st PCR産物に対し、2nd PCRとしてCOLD-PCRを行い、CHIPS法でスクリーニングすることで、Full mutationからMosaic mutationへのスクリーングが検体を無駄にすることなく連続して可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MugCap法に関しては、実際の症例の遺伝子診断法の一つとして臨床応用されている。簡便かつ安価、また任意のゲノム領域のコピー数をオンデマンドで測定できる技術であり、有用性は高い。COLD-PCRの基本原理は作動しており、これを踏まえたCOLD-CHIPS (co-amplification at lower denaturation temperature PCR with CHIPS)法の開発が進行中である。1st CHIPSで変異が同定できなかった場合に、残余PCR産物を希釈したものをテンプレートに用いた2nd CHIPS (COLD-CHIPS)で低頻度モザイク変異の同定を行う、2段階の検査システムを構想している。また今年度末より当学に次世代シーケンサーが導入されたため、低頻度モザイク変異が次世代シーケンサ-で検出された検体を用いて、COLD-CHIPS法の感度測定が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の診療報酬改定により、基本的に全ての先天性疾患の遺伝子検査が保険診療で可能となった。しかしながら、検査会社や全国の大学、研究施設での対応は遅れており、実質的な遺伝子検査の供給は難航すると予想される。その主たる原因は、検査コストの問題と品質管理(QC)の問題にある。金沢医科大学病院では早くより臨床検査としての遺伝子診断の普及を実践してきており、平成30年4月より、これまで自費診療で行ってきた遺伝子検査を、全て保険診療に切り替える。本研究により開発されたMugCap法およびAnchored Long-PCR法は既に実用的であり、今後はこれらの遺伝子検査に取り入れられる。本研究により開発された方法は、安価であり、汎用性が高い。従来から用いられている、遺伝子検査法の中核であるサンガーシークエンスや、近年使用頻度が上がっている次世代シーケンサーによる解析と組み合わせることで、より高いQCを、低コストで得ることが出来る。今後は、実際の患者の臨床レベルでの遺伝子診断に応用しながらブラッシュアップし、複合的かつ柔軟な遺伝子解析システムを構築し、これを金沢医科大学病院ゲノム医療センターで社会実装する。 また、多くの優性遺伝性疾患の孤発例(家系で最初の患者)で体細胞モザイク変異が認められることが知られており、血液DNAを用いた低頻度モザイク変異の同定は、遺伝子診断上の問題点となっている。現状では次世代シーケンサーを高depthで読み込むことで検出する場合が多いが、検査あたりのコストが高価であり未だ研究レベルの域を出ない。より安価かつ簡便に、0.1%程度のモザイク変異を検出できる系(COLD-CHIPS法)の開発が重要となる。当学に次世代シーケンサーが導入されたことでモザイク変異の検証は容易となったこともあり、次年度はCOLD-CHIPS法の感度検定を行いながら条件を至適化していく。
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Research Products
(15 results)