2018 Fiscal Year Research-status Report
痛覚関連電位と脳代謝モニタリングで赤ちゃんの痛みとストレスを感じ取る
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16K09005
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
岩田 欧介 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30465710)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 痛み / 新生児 / ストレス / 定量評価 / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
在胎28週未満で出生する超早産児の生命予後は飛躍的に向上しているが,その多くが遠隔期に高次脳機能の問題を抱え,就学や就労に支障をきたす.このような発達の問題は超ハイリスク児に限定されたものだと考えられてきたが,最近の研究からは在胎34-36週程度の後期早産児においても,注意欠如・多動性障害や自閉症スペクトラム障害の発症リスクが上昇することがわかっている.これらの児のMRIで高率に認められる微細な脳構造異常が関連していると予想されているが,その成員は明らかではない.慢性的な低酸素虚血,炎症,に加え,最近では痛み刺激が脳病変や発達異常の一因ではないかと言われている. 本研究は,NICUにおいて痛み関連電位および脳酸素代謝の変化を観察することで,新生児の痛み・ストレスへの反応を科学的に定量する測定系を確立することを目標とする.これまでに計測が完了したデータからは,2017年度の解析から予想された通り,静脈穿刺刺激と関連した心電図の特定周波数成分の減少が,ビデオ画像と心拍数の絶対値から評価された主観的痛みスコアの数値と非常に強く相関する傾向が一貫して確認された.施設交代のために遅れが生じているが,1年間の延長により,予定症例数の評価を終え,痛み評価法を確立させたい.本研究に至るパイロット研究を含めた業績では,痛み・ストレス・生体リズムに関する英論文2本,測定系に関する英論文1本の掲載が決まっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究2年目の2017年度に研究代表者の施設異動があり,一時研究が中断されたが,2018年度は計測機器更新・倫理審査および痛み評価スケール確立のための症例リクルートメントと計測を再開することができた.医学的理由で静脈採血が予定された児において,インフォームドコンセントと保護者の書面による同意を経て,心拍・呼吸・簡易脳波・動脈血酸素飽和度・脳組織酸素飽和度を同時記録し,痛み刺激前後の各測定項目の絶対値及びその経時変化の特定周波数成分の変化を抽出し,サンプリング周波数488hzで採取した心電図波形変動の特定周波数成分が,確立された痛み反応の主観評価スコアと非常に強い相関を見せることが確認されている.2017年度の研究中断期間のため,2019年度まで研究機関を延長して予定症例数をリクルートする予定であるが,研究機関内に新生児の痛みを定量化する客観マーカーの基本的アルゴリズムを確立・提案することができると考える.データが固定され次第,可及的速やかに英文査読誌に投稿予定である.関連研究として,唾液中コルチゾールを経時測定した研究成果が,2編の英論文として2018年度に公表された.
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を延長した2019年度には,定期採血前後のデータを22症例分収集し,現在の新生児における標準的な痛み評価法である確立された主観スコアとの相関を証明する.現時点では心電図変動が最も客観性が高く,ノイズに強い変量として認識されているが,心電図以外の低侵襲な変量(脳波・近赤外線情報など)が,補完的にスコア予測の向上につながらないかを,二次解析で明らかにする. 22症例のリクルートメント完了後は,当初計画に追加する形で,空腹などの痛み刺激以外のトリガーによって啼泣を始めた児において,同じ組み合わせのポリグラフ測定を行い,痛みによる反応との違いを弁別可能か検討する.
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Causes of Carryover |
本年度はデータ収集用のポリグラフを新規購入したが,当初予定と若干の価格差が生じた.最終年度はポリグラフの消耗品,計測助手への謝金,解析ソフトウェアの更新,成果発表のための学術集会参加費用に予算を計上している.
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Body Temperature, Heart Rate, and Short-Term Outcome of Cooled Infants2019
Author(s)
Tsuda Kennosuke、Iwata Sachiko、Mukai Takeo、Shibasaki Jun、Takeuchi Akihito、Ioroi Tomoaki、Sano Hiroyuki、Yutaka Nanae、Takahashi Akihito、Takenouchi Toshiki、Osaga Satoshi、Tokuhisa Takuya、Takashima Sachio、Sobajima Hisanori、Tamura Masanori、Hosono Shigeharu、Nabetani Makoto、Iwata Osuke
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Journal Title
Therapeutic Hypothermia and Temperature Management
Volume: 9
Pages: 76~85
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Book] 新生児学テキスト2018
Author(s)
一般社団法人 日本新生児成育医学会
Total Pages
864
Publisher
メディカ出版
ISBN
978-4-8404-6847-3